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古文書・ポップカルチャー…多文化共生へ日本と世界を知る 神奈川大学 国際日本学部

2020.11.11

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濱田ももこ
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今年4月、神奈川大に誕生した国際日本学部。多様な文化や価値観を理解し、世界・日本・地域の懸け橋となる人材を育てる。そこには日本と世界を相対的にみる力を養う環境が整えられている。(写真提供/神奈川大)

もともと外国語学部にあった国際文化交流学科と、歴史民俗資料学研究科(大学院)を基礎に設立された国際日本学部。国際文化交流学科、日本文化学科、歴史民俗学科の3学科を擁し、日本と世界の文化を学べるのが特徴だ。現在学部長を務める坪井雅史教授は、新学部の目的についてこう話す。 

「日本には移民や外国人がますます増えるでしょう。日本の文化について相手に伝える機会も増えます。これからは、日本の歴史や文化を相対化し世界のなかでどう位置づけられているかを正しく認識する力が求められます

60ほどのゼミから好きな分野を選べる

「歴史民俗学科」では、民具や古文書などの史料を活用した授業が展開される。「日本文化学科」では、古典文学から歌舞伎などの伝統芸能、現代のポップカルチャーまでを網羅。また、「国際文化交流学科」では、海外の大学で日本の文化や宗教を研究した外国人教員も在籍し、海外における日本研究や、日本文化と他国の文化の関係性を学ぶことができる。

いずれの学科も、世界における日本の位置づけをより理解するため、一般教養や学科特有のカリキュラムとは別に「学部教養科目」が設けられている。国際社会や平和について学ぶ「国際平和論」や、人種差別や宗教などを議論する「多文化共生論」などがある。「学部教養科目」とゼミは3学科全ての学生が履修する。

「本学部は学生数307人に対して61人という多くの教員が在籍し、それぞれが専門分野をいかしたゼミを開講しています。異なる文化を学んだ学生同士がゼミや授業で交流することで、学部のなかから多文化共生を実現させたい」(坪井教授)

1921年、渋沢敬三により創設された「日本常民文化研究所」。民具や古文書の収集、漁業史研究など日本民衆の生活・文化・歴史を調査分析する研究センターとして先駆的活動を展開している(写真提供/神奈川大)
1921年、渋沢敬三により創設された「日本常民文化研究所」。民具や古文書の収集、漁業史研究など日本民衆の生活・文化・歴史を調査分析する研究センターとして先駆的活動を展開している(写真提供/神奈川大)

図書以外にも民具や古文書などの史料がそろう

日本近世史や古文書の修復を専門とする関口博巨准教授の授業では、実際の古文書から江戸時代の人々の生活を読み解く。関口准教授は言う。

「史料に基づいて事実を発見し、自ら新しい歴史像を構築する面白さを伝えたい。一つの文書から読み解けるささいな歴史が、大きな歴史へとつながっていきます

この日の授業では、江戸時代の古文書が使われた。新型コロナウイルス感染拡大の影響のためオンライン授業ではあるが、カメラ越しに古文書が映し出された。映し出されたのは、九州の幕府領の年貢米を大坂に運送する際に、廻船業者が中継港の監査役人に提出した内容の異なる2通の古文書だ。どちらも作成者・宛名・日付は同じだが、1通は「積載量などは規定通りです」という表向きの覚書。もう1通は「過積載になっていますが、あなたにはご迷惑をおかけしません」という内々に書かれた裏の証文だった。関口准教授は学生たちにこう伝えた。

「何かあった時の備えとして“実はこうでした”ということを記録として残していたんですね。史料に書かれていることが全て事実とは限りません。しかし、嘘のなかにも歴史があります。古文書を正しく読む力を身につけて、新しい歴史を発見してください

古文書を並べ、オンライン授業を行う関口博巨准教授。古文書のなかで、「難しき」という言葉が、江戸時代では「六ケ敷」と表記されていた。「歴史を知るために史料の参照は不可欠。正しく解釈し、自ら新しい歴史像を構築する面白さを伝えたい」(関口准教授)(写真/濱田ももこ)
古文書を並べ、オンライン授業を行う関口博巨准教授。古文書のなかで、「難しき」という言葉が、江戸時代では「六ケ敷」と表記されていた。「歴史を知るために史料の参照は不可欠。正しく解釈し、自ら新しい歴史像を構築する面白さを伝えたい」(関口准教授)(写真/濱田ももこ)

授業後、参加していた学生のひとりである歴史民俗学科1年の益子綾乃(ましこ・あやの)さんは「まさかオンラインで古文書の虫食い跡や和紙の繊維までみられるとは思わなかった」と、感動した様子だった。

歴史民俗学科は、同大の日本常民文化研究所を設立の基礎としている。渋沢敬三(栄一の孫)が創設した100年の歴史を誇る研究所だ。そのため、一般蔵書のほかにも民具や古文書などの実物の史料が豊富にそろう。また、学びの一環として実際の古文書の修復に携わることもできる。

「日本常民文化研究所」には、農作業の際に使用されていた収穫かごなども所蔵されている(写真提供/神奈川大)
「日本常民文化研究所」には、農作業の際に使用されていた収穫かごなども所蔵されている(写真提供/神奈川大)

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