新しい教育のカタチを考える
農業高校が元気だ! 洗浄剤開発・盆栽輸出……学ぶのは「課題解決策」
2020.11.13

「就農」がゴールではない 生徒の多くは非農家出身
「農業高校は家の農業を継ぐための技術を学ぶ地味なところ」というイメージが強くあります。しかし農業系職業学科で学ぶ全国8万人の生徒の多くは非農家出身で、卒業後は進学したり、一般企業に就職したりしています。
農業高校は必ずしも「就農」だけがゴールではありません。農業高校に入る大半の生徒にとって、農業は新鮮なワンダーランド。農作業の実習や家畜の世話などの授業があるものの、生徒に興味を持ってもらうための工夫を凝らしていました。農業は身近な自然や生きものと深くかかわります。都会の日常生活では、なかなか体験することができません。教育の手段として農業を利用し、未来に向けた創造力を磨き上げるのが、今日の農業高校の役割になっています。めざすゴールはたくさんあるのです。

農業の側も、農業高校を必要とするようになってきました。全国農業高等学校長協会の松林謙悟事務局長は、「15年ほど前から、日本農業は生産だけではなく、6次産業化と呼ばれる加工や販売に力を入れてきました。全国で特産品開発が始まり、JAや食品企業と、地元農業高校との連携が次々に生まれています。生徒たちにとっても、座学では得られない社会体験の場が広がっているのです」と言い、地元農業と農業高校との間でウィンウィンの関係が築かれていると指摘します。
また、6次産業化が進む中、農業高校で学ぶ女子生徒の比率が高まっていると松林事務局長は言います。地域や学科によっては女子生徒の方が多いところもあるようです。
野外で陽光を浴びてたっぷりと体を動かしつつ、地域資源を生かした商品の開発にも知恵を絞る。男子にとっても、女子にとっても魅力的な学びの場になっているのが、今の農業高校です。