『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革
教師はファシリテーターたれ! 大人気シリーズの著者が語る、これからの教師像
2020.11.19

前回、悩める教師を導く書として話題となっている「まんがで知る教師の学び」「まんがで知る 未来への学び」シリーズの著者である、熊本大学教職大学院准教授の前田康裕さんに、「知識を詰め込んで終わり、という学習観は刷新するべき」といった言葉をもらった。大きな変革の波にさらされている学校現場だが、これからの教師にはどんな役割が求められているのだろうか。引き続き、前田さんに目指すべき教師像についてうかがった。
先生による適切なふりかえりが学びを定着させる
これからの学校での学びがアクティブラーニング中心となっていくとすれば、先生たちは、知識技能を伝達する従来型の授業をする機会が減っていくこととなる。
これは教師の負担軽減へとつながっていくのだろうか?
「負担が軽くなるかどうかはともかく、役割は明らかに変わりますね。
先生は、子どもたちの活動をファシリテートしていく役割を担うようになります。
ファシリテーションとは、ものごとを活性化したり促進したりと、サポートしていくことですね。
また、子どもたちのふりかえりをうながすことも、先生の大きな役割となります。
子どもたちが自主的に学習を進めると体験だけになりがちなもの。そこで、最後にふりかえりの時間をもうけて言葉にする必要があります。
しかし、『頑張りました!』『おもしろかったです』といった感想でなく、内容的にわかったことや自分たちの学び方をきちんと整理させるのです。
たとえば調べたことをリーフレットにまとめる学習をふりかえって、人に伝えるときには事実を伝える文章と、意見を伝える文章を区別して書かないといけないことがわかったとか。
文章だけでは伝わらないところは写真で補うとうまくいっただとか。時間が足りなくなったので、見通しを持って作業するのが大事だとわかったなど。
また、『〇〇君がほめてくれてうれしかった、自分も友だちをやる気にさせる言葉をかけてあげたい』といった仲間をリスペクトすることの大切さも、ふりかえって学びとして定着させていくのです」
「好き」を伸ばして学び続けられる子を育てよう
あらゆる手を尽くして、子どもたちを、社会に出てからも学び続けられる「アクティブラーナー」になるよう育てるという意識を、これからの教師は持つべきであるというのだ。
「ひたすら知識を植えつける授業を繰り返すよりも、そのほうが工夫のしがいがあって、先生たちも仕事としておもしろさを感じると思うんですよ。
アクティブラーニングによって自由に学ぶ環境を整えると、子どもたちはときに大人の想像を軽く超えていくこともあって、驚きの連続となるのもまた楽しい。
たとえばプログラミングの授業なんて、大人より子どものほうが得意だったりしますよね。授業の一環で、市販のゲームに近いようなプログラムを組んでしまう子がいたという例を聞いたことがあります。
こんな高度なものをどうやって教えたのかと先生に聞いてみると、いや教えたんじゃない、子どもがYouTubeを見て覚えたらしいと。
そういうときは、先生の教えを逸脱しているからといって規制するのではなく、素直に『すごいね』とほめてあげればいい。その子はうれしくなって、もっとのめり込んでプログラミングに取り組むようになります。
学校でも家庭でも、大好きなことをどんどんやらせる。それがいちばんの学習です。ただし、それが探究型の学習になっているかどうかだけは見極めなければいけませんけれど。
探求型の学習とは、ひとつの問いがまた新しい問いを生んで、学びを促進していくような内容のこと。
たとえばプログラミングなら、基本的なやり方を覚えたら、こんなキャラクターを登場させるにはどうしたらいいか、ひとつのステージをクリアしたら画面を新しいステージに転換させたいがどうしたらいいか、と次々に問いが連なっていく学習が理想的です。
他人がつくったゲームで遊ぶのではなく、自分でゲームをつくるという学習です。うまくステップを踏んでさらに高度な内容に進んでいけるよう環境を整備することが大切でしょうね」