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和食は「教養」 地の利生かし実地調査、問題解決力を体得 京都府立大学 和食文化学科

2020.11.25

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濱田ももこ
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和食文化の根付く京都に、2019年4月、「和食文化学科」が誕生した。和食の成り立ちやだしの成分、料亭の経営など、文系・理系を問わずあらゆる面から研究する。京都という地を生かし、料亭や和菓子屋などに直接足を運ぶという実地的な学びを重視している。

2013年、和食がユネスコの無形文化遺産に登録された。これを機に、京都府は和食文化の保護、継承、発展を担う高等教育研究機関設立の準備を進めていた。それを受けて開設されたのが、京都府立大文学部の和食文化学科だ。学科の特徴を、日本文学を専門とする母利司朗教授はこう話す。

「“食”といえば栄養や健康など、理系の学問から研究することが多いですが、京都府立大の和食文化学科は文学部のなかにありながら、学問分野は文系から理系まで幅広くカバーしています

文学部にあるが理系の教員も在籍

同学科では、和食を学ぶために五つの柱を据えている。和食の歴史や基礎知識をおさえる「和食史学」。食材のうつりかわりや日本人の食に対する思いを古典文学などから解き明かす「和食文芸」。食文化とはなにか、和食が日本や、世界でどう位置付けられているのかを地学や歴史学から辿る「食人類学」。飲食店の経営をはじめ、店の価値とはなにかを考える「食経営学」。おいしさについて、栄養素や機能性から科学的に分析する「和食科学」。文学部にあるが、科学を専門とする教員も在籍し、科目を文系と理系に分けずすべてを学ぶ。知識を縦割りではなく、複合的に身につけてほしいという思いがあるからだ。

「たとえば水菜。古くからあるといわれ、冬の食材として親しまれています。しかし、17世紀ごろの俳句では、春の食材としてうたわれている。文芸からは食文化の変遷がわかるし、科学からは栄養素や機能性を分析できる。ひとつの食材を入り口にいろんなことが学べたら面白いですよね」(母利教授)

日本文学を専門とする母利司朗教授(右)と農学者の佐藤洋一郎特別専任教授(左)。佐藤特別専任教授は「和食を通してしか学べないこと、和食だからこそ学べることを提供したい」と話す(撮影/朝日新聞出版写真部・加藤夏子)
日本文学を専門とする母利司朗教授(右)と農学者の佐藤洋一郎特別専任教授(左)。佐藤特別専任教授は「和食を通してしか学べないこと、和食だからこそ学べることを提供したい」と話す(撮影/朝日新聞出版写真部・加藤夏子)

フィールドワークで問題意識を持つ

京都の地を生かしたフィールドワークを重視しているのも特徴だ。料亭の店主に店のこだわりを聞いたり、和菓子屋で調理体験をしたり、料亭にあるかけ軸や庭の植物などのしつらえを学んだりする。農学者の佐藤洋一郎特別専任教授は言う。

現場に出かけて、何が問題なのか自分の目で確かめることが重要です。解決するためには何を学んでいかなくてはいけないのか、問題意識を持って知識を身につけてほしい。コロナ禍で店はどんな感染症対策をし、どうお客さんを呼べばいいかを考えることも、学びのひとつといえます」

現在ほとんどの授業はオンラインだが、感染対策を講じつつ、週に1回のフィールドワークは実施している。最も印象に残っているフィールドワークについて、和食文化学科2年の八阪優樹(やさか・ゆうき)さんはこう語る。

「1年生のときに農業が盛んな京都市左京区の大原という場所に行きました。代々農業を営んできた農家さんに戦後の食料の調達法を聞いたり、お公家さんしか食べられなかったという貴重な小豆を収穫したりしました。文献で読むだけではわからない、知りえないことを学ぶことができます」

2019年に行われた1年生の研修旅行の様子。フィールドワークとして、京菓子の老舗、「甘春堂(東店)」で和菓子作りを体験(写真提供/京都府立大)
2019年に行われた1年生の研修旅行の様子。フィールドワークとして、京菓子の老舗、「甘春堂(東店)」で和菓子作りを体験(写真提供/京都府立大)

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