オンライン入試の現在

試験中に通信が切れたら? 不正を疑われないためには? 受験生と高校の不安

2020.11.24

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上野 創
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「オンラインで面接中に回線が落ちたら?」「カンニングを疑われないためには?」――。新型コロナウイルス感染予防のため、来年度の新入生を選ぶ総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)をオンラインに切り替える大学が増えるなか、通信トラブルへの対応や、カンニングなどの不正防止策が、受験生と大学側の双方にとって関心事となっています。受験生が在籍する高校が突然、大学側から「校内でオンライン入試を受けさせて」と求められ、戸惑うケースも広がっています。(イラスト・菊池桃)

通信不調で面接打ち切り? 高校側の懸念

オンライン入試でまず課題として浮かび上がったのは、パソコンなどの機材の調達と、インターネットに十分な通信速度でつなげるかという点だ。3月からの一斉休校の期間中、自宅でオンライン授業を受けた高校生や大学生の中から、「パソコンは高額で購入できない」「ネット環境が悪くて授業に参加できない」「スマホが通信量の上限にすぐ達してしまう」といった悲鳴が上がった。

入試でも、同じ問題に直面する受験生がいる。そうした戸惑いは、大学側から試験の詳細が発表されてさらに広がった。

オンラインでの面接を採り入れた一部の大学が、「通信不良で切断された場合、面接を打ち切る可能性がある」「再試験は原則行わない」といった内容を募集要項に記載したのだ。受験生側の自己責任だとして同意する文書を提出させる大学もあった。

高校関係者には、「回線切断はさまざまな要因で起きるのに生徒に全責任を負わせるのは不適切では?」「自宅にパソコンがないなどの理由で受験機会を失う高校生がいる」といった懸念が広がった。9月10日、文部科学省は各大学に通知を出し、試験中に通信不具合が生じた場合や、受験生が通信環境を準備できない場合は受験生と個別に連絡を取り、代わりの措置を講じるなどの「配慮」を要請した。

オンライン入試の現在

事前に接続テスト、回線切れたらやり直し……

こうした動きに対し、大学側も多くは配慮を手厚くしている。

オンライン面接の「注意事項」の文書に「打ち切る場合がある」と書いた信州大繊維学部は、文科省の通知と同じ日、ホームページに「言葉足らずな表現があり、皆さまに不安と不信感を与えた」とおわびを載せたうえで文書を改訂。回線不良の場合は「トラブル発生時連絡用の携帯電話を用い,状況を確認したうえで対応を検討します」と書き加え、対応例として、「面接を一時中断し、他の受験者の面接が全て終了した後に再度試験の時間を設ける」などと追記した。

回線が不調になった場合の大学側の連絡先を事前に伝えたり、受験生の連絡先を聞いておいたりする大学は多い。また、同学部を含め、どうしても受験環境が整わない、不安があるという受験生に対し、事前に申し出てもらって、キャンパス内に受験できる部屋や機器を用意するケースもある。

本番前に「接続テスト」をする例も少なくない。

10月後半に総合型の筆記(課題論述)と面接をオンラインで実施した千葉大国際教養学部は、本番の数日前に2日間の日程を設定し、事前の接続テストをかなり丁寧に行ったという。

学務係によると、志願者26人が参加。接続テストでは、テレビ会議システムZoomの操作方法や通信状況などを確認し、試験当日の注意や筆記試験の解答用紙などもZoomを使って送り、説明した。原則、有線LANの使用を推奨したうえで、Wi-Fi(無線LAN)を使う場合には、各自で通信速度を確認しておくように伝えた。

「高校を試験会場」の指示に困惑する教員たち

ただ、10月上旬に全国高校長協会が調査したところ、進路指導の担当教員らから、なおも懸念や問題が報告された。

例えば、自宅の通信回線や機器で対応できない場合は、高校を受験会場にするよう大学側が指定しているケースについて、「高校では回線が不十分、不安定」「学校行事や部活などがあって静粛な環境を整えるのが困難」などの問題点が指摘された。小論文の試験問題を入試の当日にメールで高校に送り、印刷して実施させ、終了後30分以内にPDFファイルにして送らせる、という大学もあり、「事故があつた場合が不安」という声もあった。

こうした意見を受け、同協会は10月22日、文科省に対し、不具合が生じたら適切な代替措置をとることや、オンライン環境の不都合によって生徒が不利益をこうむることのないよう、「大学に指導・助言を」と要請した。

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