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数学にかける熱き闘い 予備校講師を夢中にさせた漫画『数学ゴールデン』

2020.11.30

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数学の世界大会である「数学オリンピック」の日本代表を目指して、日々奮闘する高校生を描いた漫画『数学ゴールデン』が話題です。挑戦と挫折を繰り返しながら成長する主人公・小野田春一の姿に、自らを投影する読者も多いのでは。高校で数学を教えた経歴を持つ作者の藏丸竜彦さんと、代々木ゼミナールの数学講師である荻野暢也さんが、数学から広がる世界について語り合いました。

話を聞いた人

藏丸竜彦さん

漫画家

(くらまる・たつひこ)九州大学数学科を卒業。高校で3年間数学を教えた後、上京し、プロの漫画家を目指すクリエイターを支援する「トキワ荘プロジェクト」に参加。2019年9月から雑誌『ヤングアニマルZERO』で「数学ゴールデン」が連載スタート。

話を聞いた人

荻野暢也さん

代々木ゼミナール講師

(おぎの・のぶや)東京理科大学理学部数学科を卒業後、進学校の教員を経て、1989年から現職。「大きな夢 小さな一歩」をモットーとする。『荻野の天空への理系数学』『荻野の勇者を育てる数学Ⅲ』など著書多数。

数学にかける若者たちの「熱さ」描きたい

荻野 『数学ゴールデン』は、回を追うごとにおもしろくなりますね。1巻を読み始めたら止まらなくて、連載雑誌の最新号まで買ってしまいました。僕が授業で扱ったことのある問題も出てきて、とてもリアルに楽しめましたね。

藏丸 ありがとうございます。数学って世間一般には「冷静」とか「合理的」というイメージが強いと思うのですが、実際には挫折や悔しさといった人間の生身の部分がとても色濃い学問だと思うんです。優秀な数学者でも、人生を通して挑んだ一問が証明できなかった人は大勢いますし、数学オリンピックのメダリストだって問題が解けなかった日は泣いたそうです。そういう熱い部分を描いていけたらと思っています。

藏丸竜彦さん
藏丸竜彦さん ※今回自画像イラストでご出演いただいております。

荻野 主人公の小野田春一も、高校受験で失敗していますよね。数学はできるけれど総合力で及ばず、第一志望の高校に入れなかったことへの劣等感を抱いている。でも、劣等感は次に進むための大きな原動力になります。

藏丸 おっしゃる通りだと思います。合格をゴールにすると、受験で点を取るための勉強に注力をしがちだと思いますが、少しでも興味があるならば、誰に何を言われようと、一歩踏み込んでがんばってほしい。春一の背中から、そんなことを感じ取ってもらえたらうれしいです。

荻野 数学は、解けないと思っていた問題でも、ちょっと見方を変えると解けたりする。そこにおもしろさがありますからね。一見ベクトルの問題のようで、実は座標を使うと早く解けるとか。

藏丸 なぞなぞが解ける感じというか。これが絶対と思っていたことが、他の選択肢もあることに気付かされる。例えば、小学校で「1、2、3」の数字を習いますが、ちょっと進むと分数が出てきます。「1、2、3」の間にも数があることを知るわけです。さらに進むとマイナスの概念が出てきて、もっと進むと虚数が出てくる。少しずつ世界が広がっているんです。数学を学ぶということは視点が増えていくということ、つまり、見える世界が広がっていくことなんです。

目標に向けて貫き通すカッコよさ

荻野 『数学ゴールデン』は、数学がわからない人でも楽しめますが、難しい問題をわかりやすく説明するのって難しくありませんか。

藏丸 誰にでもわかるようにしなければならないけれど、数学オリンピックを目指す以上、簡単過ぎてもいけない。そのバランスが難しいですね。ただ、楽しそうに問題を解いている人を見て、「数学っておもしろそうだな」と思ってくれる人が少しでもいたらいいかなと。作品には、そんなキャラクターがたくさん登場します。

荻野 数学オリンピックは、出題範囲が絞られているんですね。高校1年生でも受ける人がいます。

荻野暢也さん
荻野暢也さん

藏丸 そうなんです。もちろん大学レベルの問題を理解できる生徒たちですけれど、範囲としては限られているので、もっといろんな生徒がチャレンジするといいんじゃないかな。実際に数学オリンピックの元メダリストの方にお会いしたのですが、「能ある鷹は爪を隠す」を体現したような穏やかな方でした。いつか春一のライバルとして登場させたらおもしろくなりそうですが、果たしてどうなるか──。

荻野 楽しみにしています(笑)。春一のような努力家タイプは、応援したくなります。できなかった人が、がんばってできるようになる姿には、勇気づけられますから。逆に、数学に苦手意識を持つ人が、「こんな問題を解いたところで何の役に立つの?」と学びをやめてしまうのは残念なことです。学びを突き進めて、高いところに到達したからこそ見えてくる風景は確実にあると思います。学ぶか学ばないかは、人生における大きな分岐点ではないかと。

藏丸 多分、春一の周りにそういう子がいたら、春一は「一緒にがんばろう」というよりも「僕は好きなことがあるからがんばるけど、君はどうする?」という感じになるんじゃないかな。

荻野 勉強であれ、仕事であれ、趣味であれ、没頭できるものがあるのは幸せなことだし、それこそ人生の醍醐味(だいごみ)の一つ。いつも予備校の生徒たちに言っているのですが、高校を卒業したら人生のすべては自己責任だよと。うまくいってもいかなくても、自分で考え、行動したことに対しては責任を取りなさいと。本当は勉強しなきゃと思っているのに、みんなが遊んでいるから自分も遊ぶというのは、弱者の多数決に引っ張られているだけ。しっかりとした軸を持ち、自分の人生に責任を取って、やりたいことを貫き通せばいいと思います。

藏丸 これは僕自身の経験でもあるのですが、誰もやっていないことがしたくて、数学で漫画を描こうとしたときに、「正直厳しいんじゃないか」という出版社もありました。でも、一生懸命続けていたら少しずつ漫画の知名度が上がってきたし、応援してくれる人も出てきました。だから、やりたいことがあるなら諦めずに挑戦してほしい。自分の世界を変えていってほしいと思います。

『数学ゴールデン』(第1巻)
藏丸竜彦著
高校の入学式で新入生代表あいさつをした小野田春一は、壇上である宣言をしてみんなを驚かせる。それは、「数学オリンピック」の日本代表になること。 数学好きの同級生・七瀬マミや、数学オリンピックの元銀メダリストら、仲間や先輩たちとの出会いをきっかけに、 無謀といわれる目標に真剣に向き合い、成長する姿を描く。純粋で熱い数学オリンピックの世界。雑誌『ヤングアニマルZERO』に連載中。
[価格]650円+税
[発行]白泉社

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