海外の教育事情

「デジタル先進国」デンマークのICT教育、キーワードは三つ 保護者の役割は?

2020.11.30

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小林 香織
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2020年の世界電子政府ランキングで1位を獲得、教育分野でもデジタル化が浸透するデンマークでは、小学3年生頃からパソコンやiPadを授業で活用しながらICTスキルを身に付けます。現地では、どのようにICT機器が使われ、子どもたちに影響をもたらしているのでしょうか。デンマークのICT教育に詳しい専門家に話を聞きました。

話を聞いた人

安岡美佳さん

北欧研究所代表

(やすおか・みか)デンマーク・ロスキレ大学准教授。北欧研究所代表。京都大学大学院情報学研究科修士、東京大学工学系先端学際工学専攻を経て、2009年にコペンハーゲンIT大学博士取得。デンマーク工科大学リサーチアソシエイツを経て現職。小学2年生の息子と小学6年生の娘の母でもある。

デンマークでICT教育が必須である理由

――一言で「ICT教育」といっても、デンマークでは、どのようにICTが学習に組み込まれているのでしょうか?

デンマークでは「コミュニケーション」「ツール」「マテリアル」の3つをキーワードとしてICT教育が普及しています。

●コミュニケーション
教師と子ども、教師と親、学校と親の間の連絡を、デジタルプラットフォームを用いて行います。娘が幼稚園の頃からデジタルに移行していたので、病欠の連絡や先生からの報告もアプリ上でやり取りしていました。

●ツール
タブレットやPCなどICT機器の基本的な機能や操作、仕組みをはじめ、ICT機器を用いた情報収集やプレゼン資料の作成、ID・パスワードを利用したプライバシー保護など、生きていく上で必要になるであろうICTスキルの向上を目指します。

●マテリアル
ICT機器の基本操作を覚えたうえで、オンライン学習プラットフォーム「カーンアカデミー」やデンマークオリジナルのデジタル素材(筆記やリスニングのドリル)などを使って学習します。テキストに加えて映像や音声付きで多角的に学ぶことで紙の教科書だけで学ぶよりも理解力が深まるなど、学習の可能性を広げているのがマテリアルとしてのICT教育です。

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オンライン学習プラットフォーム「カーンアカデミー」の画面

デンマークでは、2010年頃から電子政府が本格化してきた背景があり、それに伴いICT教育も普及していきました。娘はコペンハーゲンの私立小学校に通っているのですが、小3から自宅のパソコンやiPadを学校に持参するよう指示がありました。家庭で用意が難しい場合は学校側がパソコンやiPadを貸与することもあり、公立学校では一般的に貸与されることが多いようです。

また、政府や行政からの連絡は、15歳からEメールで受け取らなければならず、「ICT機器が使えないから受け取れなかった」は理由になりません。この国でスムーズに生きていくために、ICTスキルの習得は必須なんです。

――安岡さんは、ICT教育に触れているお子さんを見ていて、どのようなメリットを感じられていますか?

エビデンスとなる情報を自ら探し、それに基づいて議論する能力がこれからの時代は求められます。ICT機器を使ったグループワークによって、それら義務教育で習得できるのは非常に大きなメリットだと思います。教科書は1つの知見を紹介しているに過ぎません。社会に出て国籍の異なる人と働くことになったら、教科書上の知識では太刀打ちできないでしょう。

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グループワーク中の小学5年生の女の子たち

また、子どもたちの学習の進捗や得意/不得意が可視化できるので、個別最適化した教育がしやすいのも良いこと。デンマークは元々、集団より個人を尊重する傾向があり、個人に合わせた教育スタイルが定着していました。それがより強化された気がします。

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