「好き」から始めるプログラミング

子ども向けプログラミング言語「Scratch」とは 専門家と現役高校生エンジニアに聞く

2020.12.03

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夏野 かおる
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子ども向けプログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」。学校や民間のスクールで広く導入されており、スクラッチを通じてプログラミングの基礎を学んだというプログラマー・エンジニアも少なくないのだとか。スクラッチの魅力や使い方、家庭での取り組みなどについて、Scratchプログラミングの第一人者として知られる阿部和広さんと、実際にスクラッチを通してプログラミングの基礎を学んだ三橋優希さんに伺います。

ブロック1つでプログラムが書ける

スクラッチは、マサチューセッツ工科大学(略称MIT)メディアラボで開発された教育用プログラミング言語である。2006年に最初のバージョンが開発され、2013年には非営利団体としてスクラッチ財団が立ち上げられ、世界各国に広がった。2020年12月時点では、世界196カ国で利用されている。

完全無料で利用でき、準備するのはWebブラウザだけ。その手軽さから、プログラミング教育におけるデファクトスタンダード(事実上の標準ツール)として広く用いられている。

とはいえ、「無料」で「手軽」なツールは他にもあるはず。なぜスクラッチだけがここまで広く用いられているのだろうか?

日本語版スクラッチの翻訳者であり、Eテレ『Why!? プログラミング』プログラミング監修者でもある青山学院大学大学院特任教授の阿部和広(あべ・かずひろ)さんはこう語る。

「スクラッチの強みは、比較的簡単に『プログラムが動く経験』を得られることでしょう。ブロックを1つ、ポンと置くだけで『ネコが右に10歩動く』プログラムを書くことができる。気軽に成功体験を得られるため、ハマる子はどんどんハマっていくのです。」

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青山学院大学大学院特任教授の阿部和広さん

スクラッチがきっかけで現役高校生エンジニアに

「ハマった」子はどうなるのか。その一例とも言えるのが、文科省・経産省が後援する「未踏ジュニアスーパークリエータ」に認定された三橋優希(みはし・ゆうき)さんだ。

現役高校生でありながらWebデザイナーとして働き、プログラミング教室の講師も務める。過去にはUnityエンジニアとしての勤務経験もある。そんな三橋さんをプログランミングの世界へ誘ったのも、スクラッチだという。

「父の紹介がきっかけで、小学6年生ごろからスクラッチを通じた作品づくりに取り組むようになりました。日本語で分かりやすいし、『なんだかいろいろできそうなツール』だと感じましたね。自分のイラストにインタラクティブな(プレイヤーの動きに反応する)動きをつけられるのが楽しく、どんどんのめり込んでいきました」

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現在、N高等学校に在籍する三橋優希さん

スクラッチは、ゲームやアートはもちろん、シミュレーションやロボットプログラミングにも応用できる。たとえば「シミュレーション」で検索すると、物理法則や地震、株のシミュレーターのほか、新型コロナウィルスの広がりをシミュレートする作品などが続々と表示される。

イラストを描くのが好きな三橋さんは、もっぱらゲーム・アート派のよう。国際的なプログラミングコンテストを含め数々の賞を獲得してきた三橋さんに、もっとも好きな作品についてたずねてみると、「GO GLOBAL! プログラミングコンテスト2017」で最優秀賞に選ばれた「つながる。」を挙げた。

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三橋さんが制作したスクラッチ作品「つながる。」

「コンテストのテーマが『つながる』だったことから、タイルを回転させて人と人をつなぐゲームを思いつきました。ゲームシステムやデザインはもちろん、イラスト、効果音、フォントなど、すべてを一から作りました。大変だっただけに、思い入れの深い作品です」

一度はスクラッチのトップページに配置され、全世界からの注目を浴びたこともある三橋さん。「スクラッチで学んだことの中で、現在の仕事に生かされている経験は?」とたずねると、「全部」という答えが返ってきた。

「スクラッチでの作品づくりを通して、思いついたアイディアを形にする一連の流れを学びました。まずは実現したいものに向けて、『どうすれば作れるかな?』と徹底的に調べる。そこで得た情報を取捨選択し、実装する。そして完成まで持っていく。

実際に私は、あるアルゴリズムを実装するために難しいC++(汎用プログラミング言語)のプログラムをがんばって読んでいたこともありました(笑)。モノの動きをリアルにするために、放物線の数式を調べて実装したこともあります。とにかく『作りたい』一心で、あきらめずに取り組めたのは貴重な経験でした」

周囲の人や先哲の考え方などを参考としつつ、自ら必要な知識を獲得し、課題の解決へと導いていく。これぞまさに、文科省の言う「アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)」ではないだろうか。

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