コロナでどうなる大学入試
3大予備校幹部が語る 2021年度大学入試直前情報① 河合塾・富沢弘和氏「地元志向が強まる」
2020.12.07

新型コロナウイルスの感染拡大、初めての大学入学共通テストと、未経験のことばかりの2021年度大学入試は、一般選抜(旧一般入試)の本番が近づいてきました。秋以降にようやく、ほぼ例年並みに実施できるようになった模試から見えてきたことは何でしょうか。高校の様子はどうなっているのでしょうか。河合塾、駿台予備学校、代々木ゼミナールの3大予備校の幹部に、入試の直前情報を聞きました。(写真は、最後になった今年の大学入試センター試験で解答用紙の配布を待つ受験生たち=名古屋大)
都市部の大学を避けて地元に残るため資格系が人気
(とみざわ・ひろかず)校舎スタッフ、模試作成部門を経て、教育情報部門に携わる。全統模試のデータを基にした大学入試動向分析、進学情報誌「ガイドライン」「栄冠めざして」などの編集を担当。2016年から現職。
8月の全統共通テスト模試に続いて、10月から11月初めに模試を実施しました。12月に最後の全統プレ共通テスト模試を行います。受験生の志望動向は8月の模試から傾向はあまり変わっていません。
全般に感じるのは、共通テストへの移行やコロナ禍での入試であることを背景に、地元志向、資格志向、安全志向が強まっていることです。
地元志向が強まっている原因の一つには、地方から首都圏の大学への志望者が減っていることがあります。地区ごとに受験生が志望している私立大の所在地を昨年と比較すると、北海道、東北、北陸、東海、中四国、九州のいずれも関東の大学の志望者が減り、地元の大学の志望者が増えています。都市部の大学を避けて地元に残ろうとすると、地元で就職できる医療系や教員養成系が有力な選択肢になるので、そうした資格系の志望が増えています。
10月中旬に公表された共通テストの志願者数は、前年のセンター試験の96%と減少しました。現役生はほとんど減っていませんが、既卒生(浪人)が2割減っているのが大きなポイントです。
国公立大は、こうした受験人口の減少に加え、共通テストの難化が予想されることから、最終的には志願者が減ると見ています。模試でも関東や近畿を除いて、昨年より国公立大の志望者の割合が減っています。共通テストの内容に負担感があり、志望校に国公立大を書かない人が増えています。
系統別では、先ほど触れた資格系が人気です。社会福祉、教員養成のほか、食物・栄養、住居・生活科学も堅調です。医療系は現役生で見ると、医、歯、薬ともに増えています。薬は新型コロナの治療薬に関心が集まっているためか、かなり増えています。
文系は法・政治が減っています。本来は景気が悪くなると、公務員などを目指して志望者が増えるのですが、難関大が多いことと浪人生が減っていることが影響していると思われます。
理工系は情報の人気が高いです。逆に機械は低調です。農学系は他の理系分野に比べると女子の比率が高いのですが、数年前から女子志望者が文系に流れた影響を引きずり、人気が下がっています。獣医を含めて志望者が減っています。
大学別に見ると、難関大、準難関大、その他の大学とも差はなく、難関大を避ける動きは感じられません。ただし、難関大は医学科と同じで、人気は下がっていないが、既卒生が減っているので、競争は緩やかになると思います。
個別の大学では、筑波大が従来の学類・専門学群選抜とは別に、1年次の終わりに学類・専門学群を決める総合選抜や、金沢大が後期日程を廃止し、前期日程で導入する文系一括、理系一括入試で、志望者が集まっていません。文理融合や総合選抜は社会のニーズはあるのですが、受験生は飛びつかないようです。
新型コロナ対応で個別試験をやめて共通テストで判定する横浜国立大は、模試時点では敬遠されています。