『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

カリスマ数学教師イモニイが語る「子どもたちが“プルッ”とする学び」とは

2020.12.11

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桜木 建二
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このご時世だ。さまざまな施設が使えなかったり休校期間があったりと、ふだん通りに勉強を進めるのが難しい向きも多いことだろう。
これを機に、「学ぶ」「教える」「育てる」とは本来どういうことなのか、どんなかたちで進めるのがいいものか、改めてしっかり考えてみたいところだな。
そこで、だ。今回は「学び、教え、育てる」ことについて、独自に深く探究しているイモニイこと井本陽久さんに、話を聞いてきたぞ。

視察希望が絶えない「井本授業」とは?

井本さんは、神奈川県鎌倉市の栄光学園中学高等学校で、長らく数学の教師を務めてきた。

主に中学生を担当しているのだが、その授業スタイルは独特そのものだ。板書をしながら教師が話し続ける講義形式ではないし、取り組むべき問題は示すものの、先生の側から解答を示すことは一切ない。

考えるもととしての公理や定理を与えられた生徒たちは、小グループに分かれて問題に取り組み、自分なりの解き方を模索していく。生徒一人ひとりがみずから考えることを、何より重視しているのだ。

知的好奇心を喚起し、意欲をかき立てることに長けた井本さんに導かれ、生徒たちは授業から「知ること」そのものの楽しさを感得しているよう。

「井本授業」が生徒に人気なのはもちろんのこと、これを見学したいという教育関係者が引きも切らないのである。

「学び」に触れられる場を提供したい

「成長し伸びていくのは、あくまでも子どもたち自身の力によるもの。僕にできるのは、生徒たちをいつもよく見ること、それくらいですね」
井本さん本人は、あっさりとそう言う。

ただし、だ。栄光学園といえば、東大合格者数上位の常連校であり、首都圏屈指の進学校のひとつ。

井本さんの数学の授業が生徒たちの論理的思考力をみっちり鍛え、高い学力の下支えになっているんじゃないだろうか。

「どうなんでしょう? そのあたりは結果論で、僕自身はそういうこと、本当にまったく意識していないんですよね。

考えているのは、縁あって出会えた子どもたちが存分に『学び』に触れられる場をつくりたい。ただそれだけです。

生徒たちが『プルッ』とするようになって、その様子を見られれば、こちらも幸せですから」

「プルッ」というのは、井本さん独特の表現。人が目を輝かせて生命力をみなぎらせている状態を指していう。

教育とは子どものありのままを認めること

学校の授業なんて、「わかる」「わからない」の差はあれど、おもしろかったり、ワクワクしたりすることなんて、実際にはまずないではないか。

なぜ、井本さんは、授業を躍動させることができるのか。

「学校という場が僕は好きだし、生徒一人ひとりと出会えた縁を、得難い貴重なものと痛いほど感じてはいますが、ただそれだけですよ」

学校という場には、いわゆる受験学力をアップさせるだけではない魅力があると、井本さんは言う。

「学校のよさというのは、子どもたちが目的なく来る場であるところですね。生徒にしてみれば、学校ってまさに日常じゃないですか。

『今月はこういうことを学ぶために学校に通っているんだ』なんて、意識的に捉えている人はまずいない。もっと漠然として、当たり前の存在としてある。

明確な目的がないから、余白ができて、葛藤も生まれる。そこがいいんです。

教育というのは、差し迫った目的や目標を達成するためのものではないと、僕は考えています。

いまその人がそこにいる。存在していること自体を喜んでもらえる。認めてもらえる。そうした肯定感を与えてあげることが、まずは何より大事なこと。

そのうえで、子どもが生きていく力を身につけたり、力を伸ばしていく姿が見られたりしたら、それもまたうれしい。

そこがベースだと見定めると、あまりにも目的を重視し過ぎる場というのは、僕の考える教育の場としてあまり機能しないんじゃないかと思えてしまいます」

(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜2」 パート1から
(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜2」 パート1から

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