コロナ時代の塾活用法

オンライン授業でも子どもは伸びる? 大手も中小塾も注力 保護者アンケで見えた課題は

2020.12.08

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葉山 梢
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新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、塾や家庭学習でもオンラインの活用が進んでいます。学びの形はどう変わったのでしょう。(写真は栄光ゼミナールのオンライン授業で指導する講師)

映像授業は想定の10倍以上が視聴

首都圏を中心に中高受験向けの進学塾を展開する栄光ゼミナールは東京都中央区にオンライン授業専用の教室をつくり、11月17日から新たなオンライン授業システムの試験運用を始めた。

「よーい、はじめ!」。ヘッドセットを着けた講師の若林咲希さんが声をかけると、画面上のタイマーがカウントダウンを始め、小3の生徒7人が一斉に問題に取りかかった。「丸つけが終わったら『手を挙げるボタン』を押してください」「100点の人にはトロフィーをあげます」と若林さん。トロフィーのマークがついた生徒は「やったー」とうれしそうだ。

業務提携するソニー・グローバルエデュケーションが開発したシステムは、すべてのやり取りが画面上で完結する。講師はPDF化したテキストを画面上で共有し、解説しながらタッチペンで画面に書き込んでいく。黒板やホワイトボードを使うことはない。

栄光ゼミナールのオンライン授業システムの画面イメージ=栄光ゼミナール提供
栄光ゼミナールのオンライン授業システムの画面イメージ=栄光ゼミナール提供

5月からテレビ会議システムのZoomを使っており、資料を共有すると生徒の顔が見えなくなる、子どもの注意を引き続けるのが難しいなどの課題の改善に取り組んできた。若林さんは「新しいシステムなら生徒の顔が常に見えるので、集中できているかがわかる。一人ひとりの様子に注意を払い、対面授業と変わらないクオリティーを保てます。低学年では、トロフィーなど遊び心をくすぐるアイテムも有効です」と話す。

栄光ゼミナールは3月中旬から授業の映像配信を始め、その後Zoomの双方向授業も加えた。6月に対面授業を再開した後も、授業のうち解法など新出内容の学習部分は映像で配信し、演習の部分は対面かオンラインを選べるようにしている。いまも3割ほどがオンラインを選んでおり、小笠原諸島に住む子どもが授業を受けたり、帰省先から参加したりする生徒もいるという。宮倉健・ゼミナール事業支援本部長は「教室のない地域でも指導ができるようになった。生徒全員が最前列で先生と向き合う感覚になるので、発言の回数も増えました」とオンライン化の効果を強調する。

首都圏を中心とする進学塾・早稲田アカデミーは他の大手塾に先駆け、3月の第2週から各校でZoomの双方向授業を始めた。ネイティブスピーカーによる英語のオンラインレッスンを始めるため各校に回線を引き、タブレット2千台を用意していたのが奏功したという。

並行して用意した映像授業は、想定の10倍以上のアクセスがあり回線がパンクしたことも。竹中孝二・教務本部長は「学習機会が失われたことに対する保護者の不安の強さと、期待の高さを痛感しました」と振り返る。

5月の連休が終わり、第1波の感染が落ち着いてくると、「早く対面授業を再開してほしい」という要望が寄せられるようになった。一方で、「クラスターが起きたらどうするのか」とオンライン授業の継続を望む声もあったため、6月以降は「早稲アカDUAL」として、対面授業をZoomで同時配信することにしたという。いまも1割ほどがZoomで受講している。体調が悪い日だけZoom、といった受け方もできるため、休まずにすむようになったという。

講師は対面授業をしながら、オンラインで受けている生徒にも声をかける=早稲田アカデミー池袋校
講師は対面授業をしながら、オンラインで受けている生徒にも声をかける=早稲田アカデミー池袋校

オンライン学習システムの「スタディサプリ」は、小学生から社会人向けに授業映像を提供している。運営するリクルートマーケティングパートナーズによると、昨年3月に80万人だった会員数は、今年9月末時点で152万人まで伸びたという。小・中コンテンツ責任者の青山倫子さんは「リアルの塾が本格的にオンライン化に取り組む前から、映像授業に特化してきた実績が評価されたのでしょう」とみる。昨年2月の調査では、小学講座会員の76%が塾や通信教育と併用していた。「塾や模試で分からなかったところだけピンポイントで復習したり、学年をまたいだ先取り学習をしたり、個人のニーズに合った使い方をしてほしい」(青山さん)

横浜市で「ひよし塾」を主宰する玉田久文さんは、6年前にスタディサプリの小学講座が始まった当初から、社会の講師をしている。小4のときに病気で2週間入院し、その後の授業についていけなかったという苦い経験があり、「長期入院している子や、学校や塾に行けない子に届いてほしいという気持ちでやっている」と話す。対面のように五感すべてを使って理解することができないため、より論理的、具体的な説明を心がけているという。

スタディサプリの授業動画の撮影に臨む玉田久文さん。間の取り方も工夫しているという
スタディサプリの授業動画の撮影に臨む玉田久文さん。間の取り方も工夫しているという

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