文系、理系の壁

開成中高・野水校長「開成は7割が理系だが、文系の素養が大事」

2020.12.11

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中村 正史
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関西の進学校を中心に、理系志望がこれまで以上に増えています。世の中には理系重視、文系軽視の風潮もあります。一方、最近は文系社員が多い企業でもAI(人工知能)やデータサイエンスの基礎を教える動きが出てくるなど、文理融合が求められています。名古屋大学で長く国際交流を担当し、今年4月から開成中学・高校の校長に就任した野水勉氏に、同校の文理選択の状況と、文系・理系についての考えを聞きました。(写真は開成中高の校舎。現在は建て替え工事中)

技術を知り、マネジメントもできる人が活躍する

――昔の旧制高校のように、専門に分かれる前に幅広い分野を学ぶべきだという意見もよく聞きます。

東大の教養学部で理Ⅰの同じ語学クラスだった同級生の中には、工学部卒業後、さまざまな経歴を経て会社のトップになった人が少なからずいます。製鉄会社に入ってから米国の大学院でMBA(経営学修士)を取り、外資系コンサルティング会社を経てGEグループ会社の社長、そして外資系製薬会社の社長になったり、総合商社に入って外資系コンサルティング会社などを経てベネッセの社長になったりした人がいます。技術を知っていて、マネジメント能力を身に付けた人が社会で活躍しています。開成の卒業生も、この20年間で起業している人が増えています。

大学の工学部の先生と話すと、工学倫理も大事という話になります。例えば会社が進めようとしていることでいろんな危険性がある時には、それを予知してサイエンティストとして発言しなければいけません。この時に、倫理や政治、経済などの勉強が足りないと、立ち向かっていけず、従順なエンジニアになってしまいます。自分の意見を持つエンジニアであってほしいです。

こうしたことは日本の教育で軽視され、より弱くなっていると感じます。中学・高校の教育でも大事なことです。

――野水さんは名古屋大学で長く国際交流を担当されてきましたが、そこで感じたことはありますか。

私は名古屋大学で30年近く留学担当教員として国際交流を担当し、日本人学生と留学生に教えてきました。「現代日本社会」を英語で教える授業のコーディネーターをしていましたが、授業の中から三つのテーマを選んで小論文を書かせると、同じ年代の学生なのに、欧米出身のトップレベルの学生の文章は独自の意見を主張して内容があるのに対して、日本人学生のものは内容が薄いのです。書く訓練をしていないためです。欧米では文章を書かせたり、授業の中でディスカッションしたりすることが普通ですが、そのトレーニングが日本は遅れています。日本の教育が実学に寄りすぎている弊害を感じます。

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