文系、理系の壁

開成中高・野水校長「開成は7割が理系だが、文系の素養が大事」

2020.12.11

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中村 正史
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関西の進学校を中心に、理系志望がこれまで以上に増えています。世の中には理系重視、文系軽視の風潮もあります。一方、最近は文系社員が多い企業でもAI(人工知能)やデータサイエンスの基礎を教える動きが出てくるなど、文理融合が求められています。名古屋大学で長く国際交流を担当し、今年4月から開成中学・高校の校長に就任した野水勉氏に、同校の文理選択の状況と、文系・理系についての考えを聞きました。(写真は開成中高の校舎。現在は建て替え工事中)

野水勉

話を聞いた人

野水 勉さん

開成中学校・高等学校校長

(のみず・つとむ)東京大学工学部工業化学科卒、同大学院工学系研究科工業化学専攻修士課程修了。動力炉・核燃料開発事業団研究員を経て、名古屋大学助手となり、金属工学専攻で博士号取得。1990~91年にハーバード大学医学部客員研究員。92年名古屋大学工学研究科材料機能工学専攻講師、96年同大学留学生センター・短期留学部門教授に就任。工学研究科教授を兼任しながら、総長補佐(国際交流・留学生交流担当)、国際教育交流センター副センター長を歴任し、留学生交流・国際交流担当が長い。2020年4月から現職。

幅広く学んだことが人生に役立った

――ここ十数年、関西の進学校を中心に理系志望者が増えています。もともとは医学部志望ですが、最近はAIなど情報工学への志望も出てきています。開成の状況はどうですか。

開成でも生徒の志望は理系にシフトしています。クラス分けはしていませんが、選択科目で見ると、7対3くらいで理系が多いです。しかし、この10年間は大きな変化はありません。

中学入試の段階で数学力が求められるので、もともと理系が強い学校です。生徒たちは文系、理系を決める前に、数学ⅡBまで学んでいます。

開成の校長も、近年は理系出身者が続いています。私は東大大学院工学系研究科工業化学専攻の出身で、今年春まで名古屋大学大学院工学研究科で教えていました。

――理系志望が増えているのはなぜでしょうか。

理系が増えているのは、世相を反映しているのかもしれません。医学部志望者は随分前から多く、根強いです。私が50年ほど前に開成を卒業した頃も、医学部志望は学年で50人を超えていました(歯学部志望を含めると60人)。私が開成に入学した頃は都立日比谷高校が東大合格者数でトップの時期で、開成は10番目くらい。現在は中学が300人、高校から100人が入ってきて400人になりますが、私の頃は高校からは50人で、高校からたくさん入ってくるようになったことも合格者ランキングを上げることに影響していると思います。

――文部科学省が以前、人文系を減らすことを打ち出して反発されたことがありましたが、世の中には理系重視、文系軽視の風潮があります。

私は高校時代、理化学部に入っていました。当時は四大公害裁判があり、化学物質が悪者になり、化学の人気が下がった時期でしたが、公害や環境問題を改善するためにも化学が必要なはず、と化学の道を目指そうと思い、東大理科Ⅰ類に入りました。教養学部では、法学や社会思想史などの文系の学問が面白かったです。また、公害問題などの社会的背景を知りたいと思い、社会問題の研究会にも入りましたが、文系の人たちが本をたくさん読んでいることに大きな刺激を受け、マルクス経済学の本まで読みました。振り返ってみると、幅広く学んだことがその後に大いに役立っています。

高校での勉強のことで言えば、理系に進もうとすると、高校2年から社会は1科目でよく、私は日本史を選びました。ところが大学受験で社会2科目の受験が必要になり、独学で世界史を勉強しました。ヨーロッパに出張した時に、現地の関係者とさまざまなことが話題になり、世界史を一通り勉強していて本当によかったと思いました。

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