『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

「大切なのは大人が邪魔しないこと」 カリスマ数学教師が語る子育てのヒント

2020.12.23

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桜木 建二
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前回、全国から授業視察が後を絶たず、カリスマ数学教師として注目されるイモニイこと井本陽久さんに、「子どもたちを“プルッ”とさせるのが教育の目的だ」など、型破りな教育法について話をうかがった。

教育に目的を定め過ぎるな。一人ひとりの子の「いのち」そのものと向き合っていけばいい。井本さんはそう説いてくれるわけだが、教育を進め続けていくには、やはり子どもが「伸びている」という実感や結果が欲しくなろうというもの。子どもの学力を伸ばし身につけさせるには、どうしたらいいだろう。特別な方法論はあるだろうか。

学力アップは教える側の力量に左右されない!

「そうですね、実際のところ『教え方がいいから伸びる』とか『秘密のメソッドがある』なんてことは、ないと思います。

 教授する側の手法やテクニックが左右する要素なんてごく小さいと僕は感じています。

 じゃあ子どもは何で伸びていくか。伸びを左右するものは何か。それは、『思考の土台』がその子にあるかないかにかかっています。

 この世界のルールやしくみみたいなものを、感覚的に得られている状態。それを思考の土台があると見なします。

 はっきりとした言葉にしていなくてもいいのですが、いろいろなことを感得できていると、新しい情報や知識を与えられたとき、自分なりに反応したり、咀嚼したりできます。

 感受性に優れているという言い方でも、外れていないと思います。そうした思考の土台があると、学びはどんどん進んでいきますよ」

子どもの伸びを促す思考の土台は何で養える?

その「思考の土台」は、意識して築くことができるものなのかどうか。

 「それは小さいころにだれもがする、遊びから養うことができます。というか、そこからしか養えないかもしれませんね。

 遊びの本質って何だと思います? 自発であることです。世にはいろいろな遊び方がありますが、共通しているのはそれが自発的で、目的はなく、何度も同じことを繰り返しながら、いろいろなことを感じ取っているところです。

 遊びを通して人は、この世界の概念やルールのようなものを、つかんでいきます。

 モノは落下するとか、冷たい・熱いの感覚とか、転がっているモノはだんだん遅くなるとか。ものごとのしくみを知る土台は、たいてい遊びから得られます。

 そうした土台があってこそ、たとえば『速さ×時間=距離』といった数式がちゃんと理解できることとなります。

 それはそうですよね。『速さ』というものに対するある種の感覚がなければ、この数式に『なるほど!』とは思えない。

 遊びを通して『速さ』に触れている子なら、数式を見たとき、いつかどこかで得ていた感覚が呼び起こされ、それが言語化されるという作業が脳内で起こります。

 『速さ』の感覚が身体内にない子だと、この数式を体得するのに丸暗記するしか方法がない。それではだんだん学びがきつくなり、伸びることもできなくなってしまいますね」

(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜」パート1から
(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜」パート1から

いまの時代は情報に惑わされてしまいがち

「思考の土台」をもとにして、みずから学びを積み重ねていくと、子どもが存分に力を伸ばしていけるようになるということか。

 「そうです、自分の興味のあることを、自分の考えのもと、自分のやり方でやる。そのとき子どもは最もキラキラと輝きます。そういう瞬間に触れられる教育の仕事って、本当に楽しいものですよ」

 井本さんは栄光学園での数学の授業を受け持つとともに、2016年からはジャンルにとらわれず学びを実践する塾「いもいも教室」を主宰してきた。

 また、神奈川県葉山町で活動する「星とおひさま 葉山里山の学校」で講師も務める。

 子を持つ親と接する機会も多々あると思うのだが、わが子を大きく伸ばすための、育て方の流儀や留意点はあるだろうか。

 「保護者の方々の話を聞くことは多くて、悩んでいらっしゃる方をお見かけすることもよくあります。とくにお母さん方がつらい立場にいるケースが多くて、なんとかできたらといつも思っています。

 本来なら母親というのは、子どもをそのまま受け止め、どんな子であろうとかわいいに決まっているという態度を、最もはっきり表明できる立場のはずですよね。

 それなのに、いまのように情報があふれ返っている状況だと、あちこちから聞こえてくる『こうすべき』『ああしておかないとまずい』といった言葉に惑わされてしまいます」

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