学習と健康・成長

子どもがカンニングに走る意外な理由 防ぐためにできることは 万が一の時の振る舞いは

2020.12.18

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有馬 ゆえ
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子どもがテストでカンニングをしていたら、保護者はショックを受けるはず。一方で、対人コミュニケーションに詳しい認知科学者の松井智子さんは、「子どもは大人の期待に応えようと、カンニングをしてしまう」と話します。こうしたすれ違いはなぜ起きてしまうのか、そして、カンニングを防ぐにはどうすればいいのか。子どもの心理から、万が一の際の保護者の振る舞いまで、お聞きします。

Tomoko_Matsui

話を聞いた人

松井智子さん

東京学芸大学 国際教育センター教授、認知科学者

(まつい・ともこ)
心理言語学、語用論、発達心理学を専門に、言葉とコミュニケーション能力の発達と障害について研究。近年は、発達障害児、バイリンガル児を含む主に3歳から12歳くらいまでの子どもを対象に、対人コミュニケーション能力の発達を研究調査している。著書に『子どものうそ、大人の皮肉 ―ことばのオモテとウラがわかるには』(岩波書店)がある。

不安を感じやすい環境に置かれている現代の子どもたち

――子どもは、どんな心理状態のときにカンニングをする傾向があるのでしょうか。

自分に対して不安を強く感じていると、子どもはカンニングに走りやすいことがわかっています。不安の感じやすさには個人差があり、性格や環境が影響します。また、不安が強い子のすべてが、カンニングをするというわけでもありません。

ただ、そもそも現代では、学校や塾、習い事などで強いプレッシャーを受けるなど、不安を感じやすい環境に置かれている子どもたちが少なくありません。

そのうえ、コロナ禍では、多くの子どもが従来よりも勉強面で不安を抱きやすい状況が続きました。学校や塾へ通えなくなり、プリント学習やオンライン授業という不慣れな方法で勉強をせざるを得なくなったのです。

特に小学生くらいの子どもは、大人ほど切り替えができず、集中力もそれほど続きません。普段リラックスするはずの家庭環境が学習の場になり、うまく適応できない子もいたはず。また、子どもはビデオ通話など非対面式の学習では学びにくいことがわかっています。学習の効率が下がった子が多いと推測できます。

――コロナ禍で増した受験生ならではの不安要素はありますか?

志望校の学校説明会や文化祭、体育祭など、学校見学が例年通りにできなくなり、進学後のイメージが描きにくくなったでしょう。緊急事態宣言下での学校の対応や授業がどのように変化したかなどの実態もつかみづらく、「この学校に行くのが本当によいのか」と考える子もいるかもしれません。

子どもがカンニングをしてしまう理由は?

――子どもがカンニングをするとき、何が動機になるのでしょう。

「みんなの求める自分でありたい」という気持ちです。思春期ごろになると、子どもは周囲が何を期待しているのかを敏感に感じ取り、それに応えたいと考えるようになります。そして、他者から見た自分を意識しながらアイデンティティーを確立していきます。

ただ、自分が周囲の期待通りでいられないとわかると、子どもは焦って解決策を探します。その間違った例の一つが、カンニング。「テストでいい点数を取れる自分」になるために、この解決策を選んでしまうのです。

――自分の存在意義を求めて、子どもが周囲の承認を求めてしまうのはわかります。それでも、大人からすると、問題解決のためにカンニングを選ぶという感覚は理解が難しいかもしれません。「悪いことをしている」とは思っていないのでしょうか?

よくないことだとわかったうえで、カンニングを選んでいる可能性が高いです。カンニングの何が悪いのかがきちんと理解できていないため、テストで悪い点数を取ったり、問題を間違ったりする方が、子どもにとってはよっぽど深刻なのです。

「悪い点数を取って保護者を悲しませたくない」「先生に怒られたくない」「塾で成績が下のクラスに落ちたら恥ずかしい」という想像が、カンニングさえすれば消えてなくなるような気持ちになっているのでしょう。

カンニングをする子どもは、常に周囲から「こんな点数を取るなんて」と叱られたり、「100点を取るなんてすごい」「頭がいいね」と褒められたりしているのだと推測できます。「高得点を取ること」「よい成績を取ること」こそが周囲の期待だと思いこんでいるから、そうなれない自分を問題視するのです。

子どもは日々、学校や塾のテストで点数評価を受けています。なかでも受験生は、点数評価が重要な意味を持つ世界にいる。テストの点数よりも、主体的に学んだり、わからなかったことがわかるようになったりする方が大切だということは、意識的に伝えない限り、伝わりにくいのです。

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