文系、理系の壁

駿台・石原賢一氏「文系の魅力がなくなるのは問題、国力を損なう」

2020.12.23

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中村 正史
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関西の進学校を中心に、理系志望がこれまで以上に増えています。世の中には理系重視、文系軽視の風潮もあります。一方、最近は文系社員が多い企業でもAI(人工知能)の基礎を教える動きが出てくるなど、文理融合が求められています。駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長に、文理選択の状況と文系・理系についての考えを聞きました。(写真は、最後の大学入試センター試験を受ける受験生=2020年1月、東京大。首都圏では5教科7科目を受ける人は多くない)

石原賢一

話を聞いた人

石原賢一さん

駿台教育研究所進学情報事業部長

(いしはら・けんいち)駿台予備学校に入職後、学生指導、高校営業、カリキュラム編成を担当後、神戸校校舎長を経て2017年から現職。

文系はサクセスロードを示せなくなっている

――この十数年、灘や甲陽学院、神戸女学院など関西の進学校を中心に、理系志望が増えています。首都圏でも学校によってその傾向があります。なぜでしょうか。

私が駿台神戸校の校舎長をしていた20年くらい前、灘高校は4クラスのうち、文系の生徒が1.5クラス、理系の生徒が2.5クラスくらいでした。最近は文系が1クラスです。

関西の進学校で理系志望が増えた理由は、二つあります。関西の理系志望は医学部志望が大半です。一つは、医師など富裕層の家庭の子どもが小学生の時から塾通いをして、灘などの進学校に入るようになったこと。もう一つは、関西の地場産業が低迷し、地元に残ろうとすると医師が有力な選択肢になることです。

関西はもともと理系志向がみられ、大阪や神戸では頭のいい子は数学や理科ができる子と思われていました。大阪や神戸は商業や工業の街で、文化は京都というすみ分けもありました。大阪には松下電器や三洋電機、シャープ、銀行の本店などがあり、以前は一番優秀な人が医学部に進んでいたわけではありません。しかし、三洋電機もシャープも経営不振で別企業の傘下に入りました。明らかな地盤沈下です。

――首都圏は関西ほどではないのでしょうか。

首都圏でも理系志望は増えています。理系で学力が高い層の生涯賃金が高いことや、理系は好不況の影響を受けにくく、内需が減っても海外に技術で打って出られることなどが背景にあると思います。

文系は子どもに将来のビジョンやサクセスロードを示せなくなっています。この40~50年で世間の見る目が一番変わったのは公務員と教員でしょう。メディアからいろいろな問題で批判されたことや、働く環境が厳しいことの影響もあります。

――文部科学省が以前、国立大学の文系縮小を打ち出して議論になりましたが、世の中には「理系重視」の風潮があります。また、メガバンクや商社など従来は文系が強かった企業でも、理系出身の社長が増えています。

文系の魅力がなくなっているのは、私はよくないと思っています。国力を考えたら、まずいことです。

文系、理系に分けるのは日本だけといわれますが、これは明治時代に先進国に追いつくための施策でした。日本のシステムの難しいところは、レールからはずれると戻れないことです。

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