どうなる中学・高校入試
2021年度中学入試直前情報①サピックス・広野雅明氏「併願校数は減少、安全志向に」
2020.12.22

首都圏の中学入試の出願が始まっています。新型コロナウイルスの感染拡大で、学校の対応や受験生の動向にも例年とは異なる傾向が出ています。首都圏の難関校に強い大手進学教室・サピックスの広野雅明・教育事業本部長に聞きました。
ひろの・まさあき/サピックス小学部で、創業期から現在まで算数の講師として現場に立つ。算数科教科責任者、教務部長、広報企画部長などを歴任。現在は教育事業本部の本部長として、入試情報、広報、新規事業の諸部門を統括。
1月の「お試し受験」は減る傾向に
――新型コロナウイルスの影響で経済状況が苦しくなった家庭も多いですが、受験者数に影響はあるでしょうか。
サピックスの公開模試(サピックスオープン)の受験者数は昨年より6~8%増えていることから、中学受験をする子どもの絶対数は大きく減ることはないとみています。ただ、のべ受験者数は減る可能性があります。特に、いわゆる「お試し受験」はしない受験生が増えそうです。
首都圏では1月10日に埼玉県、20日に千葉県、2月1日に東京都と神奈川県で入試が解禁となります。10日ごとでリズムがいいことから、従来は東京や神奈川の受験生が1月に2~3校受けるケースが多かった。しかし、今年は感染の恐れがあるため、少なめにしようという意識が働いているようです。ただ、遠くの学校を受験する人は減っても、近所で本当にその学校に行きたいという人は減りません。見た目の倍率が下がっても、入りやすくなるわけではないことには注意が必要です。
最近は午後入試を実施する学校が多く、サピックス生も2~3割が受けていました。しかし、体力的な不安や、昼食を店などで食べる必要が出てくることから、今年は絞り込まれそうです。
――今年、特に人気の学校は?
男子校なら開成や麻布より駒場東邦、武蔵。女子校なら桜蔭、女子学院より鷗友、豊島岡、吉祥といった「準トップ校」に人気が集まっています。この春はどこの塾も遠隔授業をやりましたが、小学生への学習効果を考えると必ずしもうまくいったわけではないという実感があります。本人の成熟度も様々ですし、家庭でもつきっきりで見られる親とそうでない親がいました。学力への不安から、手堅く安全にという意識が働いていると思います。
注目校としては、まず光英VERITASが挙げられます。聖徳大学付属女子が共学化し、学校の形が大きく変わります。12月1日の第一志望入試では54人が受験し、45人が合格。昨年までは定員を充足するのに苦労していたほどなので、早くも効果が出ているといえます。敷地が広く、男子にとっても魅力的な学校。女子校はどこも、しつけや英語などの面で定評があり、男子が入ればバランスの取れた人材に育つ可能性があると思います。
同じく共学化する広尾学園小石川(旧・村田女子)にも注目です。同じように共学化してグローバル教育に力を入れている都心の広尾学園や三田国際、開智日本橋といった学校はそろって難化しています。広尾学園小石川は初年度なので比較的入りやすく、東京の北部や埼玉からも通いやすい立地が魅力です。
一方、男子校から共学になる芝浦工大付属は、男子には人気がありますが、女子が爆発的に増えるかは微妙な状況。入試科目が国語、算数、理科の3科目で社会がないのと、上に乗っている大学が工学系ということも影響しているのではないでしょうか。
都内や茨城県で、公立中高一貫校の存在感も強くなっています。一般の公立校に比べて、休校中のオンライン対応も良かったと聞きます。特にコロナで家計が急変した家庭には学費の面でも助かることでしょう。