知りたい 聞きたい キーパーソンに問う

芝浦工大・井上副学長「コロナ禍は大学教育を改革する好機」

2020.12.23

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中村 正史
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新型コロナウイルスの「第3波」が広がり、大学は今後の授業のあり方を見通せない状態が続いています。対面授業の再開を求める学生や保護者とのあつれきも生じ、オンライン授業の評価は大学によってバラバラです。そんな中、春以降の経験を踏まえて、オンラインをうまく使って高等教育の変革に乗り出しているのが芝浦工業大学です。キーパーソンである井上雅裕副学長にじっくり聞きました。(写真は工学部土木工学科で行われているハイブリッドの実験の授業。左端の教員の実験を正面のTAの学生が撮影し、オンラインで同時に配信している=芝浦工業大学提供)

井上雅裕

話を聞いた人

井上雅裕さん

芝浦工業大学副学長、システム理工学部教授

(いのうえ・まさひろ)早稲田大学大学院理工学研究科物理学及び応用物理学専攻修士課程修了。三菱電機に入社。1990年ミシガン大学客員研究員、2004年博士(工学)。05年から芝浦工業大学教授、17年から副学長。専門はIoT、情報通信、システム工学、工学教育。

オンライン活用で学びは深くなる

――芝浦工業大学は「コロナ禍は高等教育を変革する機会になる」と明確に打ち出しています。この取材と同じ時間帯に国際PBL(プロジェクト型授業)が行われているというので、芝浦工大の学生と海外の学生がオンラインで課題に取り組む姿を見せてもらいました。

現在行っている国際PBLでは日本とアジアの学生約70人が10チームに分かれて活動しています。チームの一つが、栃木県那須町から「Nasu’s Town New Work Style」という課題をもらい、那須町がワーケーション(仕事をしながら休暇を取る)の場所になるための課題に取り組んでいます。今日はインドネシア、タイ、マレーシア、モンゴルなど海外の学生とうちの学生が10チームに分かれ、オンラインでディスカッションしています。一昨日は那須町の職員に学生たちが対面とオンラインのハイブリッドでプレゼンテーションしました。

国際PBLは2013年から始めて、昨年まで学生は大宮キャンパスに集まって対面で行い、タイにも行って渋滞や洪水などの課題に取り組んできました。しかし、今年は新型コロナで対面での国際交流活動ができず、80の国際PBLのプログラムのうち30をオンラインやオンラインと対面を組み合わせたハイブリッドで行っています。

――オンラインを使ってどう変わりましたか。

今回はうちの学生は対面で那須町や大宮キャンパスに集まり、海外からはオンラインで参加する、逆にタイが主体で実施した国際PBLではタイ側が対面で集まって、うちの学生はオンラインで参加することもあります。コロナが収まった後も、オンラインで課題に取り組んで、対面で現地に出かけて行く、フォローはオンラインで行う、といったようにすれば、学生の学びは深くなります。またオンラインのツールを使うことで、教員はどの学生がどれくらい話しているか、何を話しているか、話していない学生はだれかなど、学生の様子もわかります。

――「ハイブリッド」という言葉は、大学によって使われ方があいまいですが、芝浦工大ではオンラインと対面を組み合わせた形態を「ブレンディッド」と「ハイブリッド」に明確に分けていますね。

ブレンディッド(ラーニング)は1人の学生がオンラインも対面も受けることにより、それぞれのいいところを享受すること、ハイブリッド(クラスルーム)は対面とオンラインを組み合わせた教室を実現することで、対面での教室に来ることができない学生も学びの機会を得ることができます。国際的にはこの分け方が標準です。これからはこの二つの組み合わせが生まれてきて、高等教育の変革が起きると思います。

ブレンディッドは、学生が事前に教員が用意した教材をオンデマンドで予習し、授業ではディスカッションを中心に知識を活用します。学生にとって自律的、能動的な学びになり、教育の質が上がります。これによって教育のあるべき方向に進みます。教員からの一方向だった授業をブレンディッドに変えることは、コロナが終わってもやめません。

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