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Yahoo!アカデミア・伊藤羊一学長「日本の教育に欠けているもの」

2021.01.07

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中村 正史
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一連の大学入試改革の背景にあるのは、日本の教育が大きな課題にぶつかっているという問題意識です。米国や中国のようにベンチャー企業が生まれないのは、人の育て方に問題があるという指摘も聞きます。Yahoo!アカデミア学長やグロービス経営大学院客員教授として多くの社会人などに教え、2021年4月から武蔵野大学に新設されるアントレプレナーシップ学部の学部長に就任予定の伊藤羊一さんに「日本の教育に欠けているもの」を聞きました。(写真は武蔵野大学アントレプレナーシップ学部開設の記者会見=2020年11月)

伊藤羊一

話を聞いた人

伊藤羊一さん

Yahoo!アカデミア学長、グロービス経営大学院客員教授

(いとう・よういち)東京大学経済学部卒、1990年日本興業銀行に入行。2003年オフィス用品のプラスに移り、のちに執行役員ヴァイスプレジデント。15年ヤフーに入社し、Yahoo!アカデミア学長。ウエイウエイ代表取締役。21年4月新設の武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長に就任予定。著書に『1分で話せ』『やりたいことなんて、なくていい。』など。

なぜ学校で大事な三つを教えないのか

――ヤフーの企業内大学Yahoo!アカデミアやグロービス経営大学院などでいろんな人に教えてきて、感じることはありますか。

私は従来の教育への不満から活動しています。ひとことで言うと、私が受けた学校教育では教わらず、自分が社会の中で身につけてきたことがたくさんあります。どうしてこんなことを学校で教えてくれなかったのだろうかと、憤りに似た感情です。

――具体的にはどういうことですか。

第一にクリティカルシンキング。健全な批判的精神をもって論理的に思考し、課題を解決していくことです。30代半ばの頃、グロービス経営大学院の体験クラスに入り、そこで初めて知りました。100人くらいの受講生がいて、講師が「転職する時は何を考えるか」という問いを出し、受講生は好き勝手に発言したのですが、それを講師が「意見をまとめると、何をしたいか、できるか、ペイするか、この三つが重要ですね」とシュシュッと要約しました。頭のいい人はこのように考えるのだ、論理的に考えるとはこういうことだと衝撃を受けました。

その後、この大学院でMBA(経営学修士)科目を受けて、結論と根拠と例えば、の三つの構造で表せばいいと、ピラミッドストラクチャーの手法で考えるようになりました。この内容をまとめて書籍にしたのが『1分で話せ』(SBクリエイティブ、2018年)で、講演会やワークショップに招かれて伝えると、参加者は「こうすればいいんだ。簡単ですね」と言います。就活でも仕事でも人とコミュニケーションする際にも使えるのですが、会社員でもできない人が多いです。

――一つ目は思考スキルですね。二つ目は何でしょうか。

志、情熱、やり切る力といったマインドです。これも私は学校で教わったことがありません。思考がいくらできても、何を大事にしているかという思考の軸がなければいけません。

『リーダーシップの旅』(光文社新書、2007年)で著者の野田智義、金井壽宏両氏が「リード・ザ・セルフ」(自分自身をリードする)と言っています。それを一人一人が持つことが必要です。

これはトレーニングでできるのです。Yahoo!アカデミアでは、ヤフーのリーダーたちが過去を振り返り、いま大事にしているものは何か、未来をどうするかを対話します。合宿だと、「自分のことがわかった!」と熱くなったり、感極まったりする人もいます。

――自分の軸を持つということですね。さらにありますか。

人はどうやって成長するかと言えば、行動・実践して振り返って気づくからです。10代より 20代、30代より40代、40代より50代の自分が成長していると確信するのは、そのためです。スキルとマインドだけでは、人は変わりません。行動して振り返って気づくサイクルを回して人は成長します。

これら三つはすべて高校や大学では教わらずに、自分の経験の中で培ってきたことです。

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