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ペットの健康を守り社会を豊かに ヤマザキ動物看護大 動物看護教育のパイオニア

2021.01.15

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鈴木 絢子
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日本では家畜などの「産業動物」が農業分野で管轄されてきたが、「愛玩動物」の健康はあまり重視されてこなかった。日本で初めて「動物看護学部」を設置したヤマザキ動物看護大は、日本の動物看護教育をけん引してきたパイオニアだ。(撮影/朝日新聞出版写真部・小黒冴夏)

2021年に「動物人間関係学科」を新設し、「動物看護学科」との2学科になるヤマザキ動物看護大の「動物看護学部」。ペットのリハビリテーションや口腔ケアなど、動物医療の専門知識のみならず、ペット関連産業やアニマルセラピーなどについても幅広く学ぶことができるユニークな学部だ。

 自らも愛犬家である山﨑薫学長は「本学の学生は、本当に動物が好きで優しい学生ばかりです」と話す。動物病院から企業まで卒業生の進路は多岐にわたるが、やはり多くの学生がめざすのは動物病院への就職だという。獣医師には人間の医師と同じく国家資格が求められるが、「動物看護師」のための国家資格は、これまで存在しなかった。

 社会変化を見越した新たな学び

 「日本では愛玩動物がなかなか市民権を得られず、1994年に動物の専門学校を設置する際も、文部省(現・文部科学省)の定める教育分野では『文化・教養』に分類されました。医療でも農業でもなく、趣味のひとつのように扱われたのです。『看護というのは人間のためのもの』と言われたこともありました」(山﨑学長)

 同大学の前身「シブヤ・スクール・オブ・ドッグ・グルーミング」を創設したのは山﨑学長の父・山﨑良壽(りょうじゅ)氏だ。その目的を山﨑学長は次のように語る。

 「戦後復興の中で、父は女性の自立を助ける新しい職業をつくろうとしました。ペット飼育数の増加とともに関連する雇用も増えると考え、教育の場を設けたのです」

そして現在。少子化や高齢化などにより、ペット需要は良壽氏の予想通り大きく伸びた。介助犬やアニマルセラピーなども広く知られるようになり、愛玩動物のケアは人間の社会福祉と密接につながる分野になった。

 こうした流れを受け、2022年5月施行の「愛玩動物看護師法」が定める新しい国家資格が「愛玩動物看護師」だ。有資格者は獣医師の指示の下、動物の採血や投薬などを行うことができる。初回の試験は23年3月実施をめざしており、山﨑学長はこの法の制定にも尽力してきた。動物のための「看護」の重要性を「声なき動物の代弁者になり、さらに飼い主さんの心に寄り添うことが、動物看護師に求められることです」と強調する。

 同大学では動物医療の研究をより深化させるため、20年10月には大学院の設置認可も受けた。

 「多くの生命が失われた戦争を経験したことから、父は軍用や産業動物ではないペットが愛されることは、平和の象徴だとも考えていました」(山﨑学長)

 愛するペットの健康を守ることが、平和な社会をより豊かなものにする一助になる。「動物看護」は身近で壮大な分野なのだ。

 

理事長も兼務する山﨑薫学長。55年ぶりの新学校種として設置された専門職短期大学の認可にも注力した。大学・大学院も含め、ペット関連の学びをビジネスと学問の両輪で支える構えだ(写真提供/ヤマザキ動物看護大)
理事長も兼務する山﨑薫学長。55年ぶりの新学校種として設置された専門職短期大学の認可にも注力した。大学・大学院も含め、ペット関連の学びをビジネスと学問の両輪で支える構えだ(写真提供/ヤマザキ動物看護大)

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