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佐賀大学 芸術地域デザイン学部有田セラミック分野 磁器に特化し有田焼のさらなる発展に貢献

2021.01.27

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鈴木 絢子
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2016年に設置された佐賀大の芸術地域デザイン学部。地域デザインコースと芸術表現コースに分かれており、後者には「有田セラミック分野」という有田焼に特化した専攻がある。国立の総合大学で「焼き物」を学ぶ意義とは。(撮影/比田勝大直)

焼き物から地域と生活を見つめる

佐賀大の有田セラミック分野を専攻する学生にとって、重要な学習の場となる有田キャンパス。前身は1985年創設の佐賀県立有田窯業大学校で、2016年に佐賀大に統合された。学びの特色を芸術地域デザイン学部の田中右紀教授に聞いた。

「先日、福岡県で講演した際、有田焼を知らない高校生がいました。時代の変化で窯業の衰退も懸念されますが、世界的な磁器の産地である有田には、いまも優れた技術があります。『有田焼』という資源と学生を結びつけ、より幅広い学びを提供することが本キャンパスの目的です

佐賀市の本庄キャンパスと行き来して、学生たちは有田焼の制作に加えて一般教養も学ぶ。学部全体で行う地域おこしの授業も特徴的だ。学生は有田の街のフィールドワークで人口減少など地域の課題を探し、その解決のためにできることを考える。田中教授が具体例を挙げる。

「例えば、夜の大通りに賑わいを与えようと、各戸の雨どいにかける有田焼の灯籠を作った学生がいました。有田の街には装飾的な古い家が多く、灯籠をつる場所には困らない。街を観察したことによる気づきから生まれたアイデアです」

芸術地域デザイン学部の田中右紀教授。「キャンパスのロビーを展示スペースにして、地域との交流や学生の発表の場として活用する計画も進めています」
芸術地域デザイン学部の田中右紀教授。「キャンパスのロビーを展示スペースにして、地域との交流や学生の発表の場として活用する計画も進めています」

「観察」から生まれる明確なコンセプト

有田キャンパスでは海外との交流も活発だ。韓国などから留学生を多く受け入れるほか、オランダのデザインアカデミーとも交換留学協定を結ぶ。

「これからは『習ってまねる』だけでなく、求められることを調査し、課題を知り、そこから生じたコンセプトを形にするプロセスが大切です」

こうしたものの見方を養うためにも、海外の学生と接し、地域を知ることは有効だという。田中教授が繰り返すのは「観察」の重要性だ。

「食器のデザインを考える時にも、美術品の表現を考える時にも、生活や素材をしっかり観察してほしい。特に機械での作業工程が増える今日では、こうした発想やコンセプトがないと、陶磁器製品はつまらないものになってしまうでしょう」

熊本県出身の佐藤明歩さん(佐賀大大学院・地域デザイン研究科2年)は、小さい頃から焼き物に親しんで育った。

「作ること、描くこと全般が好きでした。父が陶芸作家だったこともあって、高校でも焼き物を学びました。私が入学したのは改組前の文化教育学部でしたが、焼き物だけでなくいろいろな授業が受けられて、制作にも役立ったと感じています」(佐藤さん)

日本画を学んだことは焼き物の着色にも生きているし、「西洋哲学の授業などもとても面白かった。知識はたくさんあったほうがいいと思います」と話す。学生生活の中で、佐藤さん自身の体験から得た知識もある。

大学祭や有田陶器市などのイベントで、学生が自分で作った作品を売る機会があるんです。使う人の声が直接聞けて、参考になることも多くありました」

大学院ではオブジェなどでの表現に力を入れてきたという。卒業論文では「個人作家が作る家庭のための器」についても研究した。卒業後は有田の窯元への就職が決まっているが、個人での制作は続けるつもりだ。

「私の作品は小さなパーツを組み合わせて表現するもので、小さな窯を用意すれば自分の家でもできるんです。一畳あればできることなので、仕事に就いても、好きなものを作り続けたいと思います」

作業中の佐藤さんの卒業制作。写真奥の「足」にポールを挿し、手前のジョイントでほかの素材とつなぐ予定。異素材との組み合わせで焼き物の印象が変わることを示す作品だ
作業中の佐藤さんの卒業制作。写真奥の「足」にポールを挿し、手前のジョイントでほかの素材とつなぐ予定。異素材との組み合わせで焼き物の印象が変わることを示す作品だ

卒業生の進路は佐藤さんのような窯元のほか、一般企業、公務員など。また、教員養成の長い歴史を持つ同大学らしく、教員をめざす学生も多い。

「ユニークなところではゲーム制作会社のレベルファイブに就職した学生も。陶芸での3次元制作の経験をアピールしたそうです」(田中教授)

学内の連携で新しい試みも始めている。理工学部でファインセラミックスを研究する教員の協力を得て、焼成時の収縮率を抑えた特別な粘土が生まれた。大きな作品もつくりやすくなったそうだが、これも総合大学ならではの強みだ。 

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