海外の教育事情

フィンランドの体育授業、順位をつけない理由 日本とは違った課題も

2021.01.22

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小林 香織
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順位を付けない=課題ゼロではない

皆さんのお話を伺うと、「伸び伸びと運動を楽しむ」という目的は概ね達成できているようです。一方、課題がないのかと言えば、決してそうではありません。

「順位を発表しなくても足が速い子は目立つし、周囲と比較した自分の運動能力を子ども自身はわかっているようです。長男が小学生だったとき、青ざめた顔で『僕は運動が得意じゃない』と告白してきたことがありました」(靴家さん)

順位を付けない=運動音痴に悩まないという方程式が成り立つほど、単純ではない様子。ただ、先生たちは子どもたちが不健全な比較をしないよう、日頃から目を配っており、そのような兆候が見えたときは、注意喚起として子どもたちに声をかけているそうです。

フィンランド運動_2
放課後にサッカーを楽しむ小学生たち(靴家さん提供)

さらに、運動不足の課題、そこから派生する習い事の実情も見えてきました。

「日本のように基礎体力を育むような授業がないため、運動能力育成の大部分は家庭の負担となっています。多くの家庭は共働きで、小学1年生から鍵っ子でスマホ持ちというのが実情であり、運動不足が深刻です。きちんとした食育もされておらず、買い置きの惣菜で食事を済ます家庭も多いので、子どもの肥満率の高さも問題視されています」(マロさん)

マロさん同様、靴家さんも「学校の授業だけでは運動不足になるのは周知の事実」だと指摘します。そんな背景から、現地ではホッケーやスイミングなどスポーツ関係の習い事が人気。ただ、学校の体育とは異なり、なかなかハードな一面が見え隠れします。

「長男は小学生のとき、ボウリングを習っていました。人口が550万人ほどしかいない小さな国なので、マイナーなスポーツで成績を伸ばすと、すぐに大会に引っ張り出されます。そうなると週末は練習で埋まり、ワイワイ楽しむ雰囲気ではなくなります。子ども以上に熱くなる『ホッケーお父さん』なんかも珍しくありません。次男は、長男の様子を見て習い事を避けていますね」(靴家さん)

伸び伸びとした教育方針だからこそ、「物足りない」「学校以外の場所で運動する際に、スポーツの勝ち負けの厳しさに直面する」といった問題が起こることもあるのだそう。

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