『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

英文学者の阿部公彦・東大教授に聞く 英語試験の4技能は問題だらけ 本当に身につく英語学習のポイント

2021.02.04

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桜木 建二
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コロナ禍にのみ込まれて話題になることが減ったものの、大学受験改革に関する動きが先行き不透明になりつつあるな。子どもたちや子を持つ親なら気を揉んでいることだろう。不安な気持ちは察するに余りある。とりわけ英語試験の混迷の度は深い。英語の力を「よむ・きく・かく・はなす」の4技能に分け、それぞれの習熟度をみる試験内容を取り入れようという動きが、昨年まであったのだ。しかしこれは理念的にも運用上も無理筋だとして、いったん流れが止まることとなる。その後の方向性はまだ判然としない。

4技能という言葉を掲げて推進された国の英語政策に対して、論理立てて問題を指摘し続けてきたのが、東京大学文学部教授の阿部公彦さんだ。阿部さんは昨年10月、『理想のリスニング ― 「人間的モヤモヤ」を聞きとる英語の世界』(東京大学出版会)を刊行、これからの英語学習の方向についてモデルを示したところだ。阿部さんの言葉を聞こう。

独り歩きする「4技能」看板と業者の影

「4技能という言葉は昔からあったただの区分けなのに、ある時期から急に「すばらしいもの」として唱えられるようになりました。

これは、試験を4つに分けてやる4技能型試験を導入し、入試改革の『売り』にしたかったから。

英語教育の現場にいて現実を知っている人なら、「4技能」という言葉だけ連呼しても有効な改善策にはつながらないし、それで生徒の英語力が急に伸びるわけがないことはわかっているでしょう。

結局は「4技能導入」を看板にして、4技能型テストをやっている民間業者に入試を委託することが目指されていただけと言わざるを得ません。

そもそも4技能型と言っても、目新しいのはスピーキングのテストが入ることくらい。しかもこの肝心のスピーキングテストが問題だらけなのだから困ったものです」

なるほど、一般にはなんとなく新しく響く「4技能」という言葉を、外部試験導入の大義名分に使っていた面が強いわけだ。

お金が絡んだことが優先されていると見えるようでは、混乱するのも無理はない。

単語力や基礎文法は4技能すべてに関わってくる

「もちろん日本の英語教育には改善の余地がたっぷりとあって、政策のいちばん根っこにある『英語の総合力を高めていきましょう』という目標はうなずけるものです。

その際に、4技能という考えにこだわり過ぎると弊害が生じてしまうということ。

たとえば英語の力を上げるにあたっては、まずは単語力や基本的な文法の知識がないと話になりません。

それを知らなければ、英語の理解も運用も始まりませんから。

じゃあ単語力や基本的な文法は、4技能のうちのどこに入るのか? すべてに関わってくるに決まっています。

英語を4つの技能に分けて考えるのはあくまで便宜的なこと。実際の英語の運用ではさまざまな技能が連携しています。

それなのに、まるで4つ別々の技能があるかのように杓子定規に4分割していたら、学習は停滞するでしょう。

4技能という言葉が暴走してしまったのが、今回の混乱の要因です。いったん忘れ去って差し支えないと、私は考えます。

そのうえで、英語の習得のためのもっと有効な方法を編み出していかなければいけないでしょう」

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