どうなる中学・高校入試

絶対に「全敗」させない!(上) 笑顔の春を迎えるため、親の「おびえ」こそが大事

2021.01.28

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矢野 耕平
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近年、受験した中学校がすべて不合格になってしまう「全敗」「全落ち」などという言葉とともに、ショックのあまり2月から小学校に通えなくなってしまった、という事例をよく耳にします。2月1日からは、東京・神奈川の入試が始まります。「全敗」させないため、保護者はどう臨めばいいのか、必要な心構えは何なのか。中学受験専門塾「スタジオキャンパス」(東京)の矢野耕平代表に寄稿してもらいました。(写真は、アクリル製の仕切りが設けられた席に座る受験生=2021年1月10日、さいたま市、藤原伸雄撮影)

第1志望校に合格できない受験生が大勢を占める

2021年度の中学入試が始まった。この1月は東京・神奈川以外の各道府県の中学入試がおこなわれ、すでに進学先の確定した受験生もいることだろう。

そして、2月1日からいよいよ東京・神奈川の中学入試本番が幕を開ける。

近年の首都圏中学受験は激戦が続いている。第1志望校合格の栄冠を手にできるのは「3人に1人」とも「4人に1人」とも言われている。換言すれば、中学入試は悔し涙を流す子のほうが大勢を占める厳しい世界なのだ。

だからだろう。近年は「全敗」「全落ち」などという忌まわしい言葉を耳にするようになった。加えて、そのように中学入試で惨敗を喫した子が、ショックのあまり小学校に顔を出せなくなってしまうという事例が話題にのぼるようになった。

2月1日からの中学入試本番を目前に控えたいま、受験生の親はどのような心構えを持つべきだろうか。

わたしはこう考える。第1志望校合格に向けて「イケイケ」なのは受験生本人だけで十分であり、親は「最悪の事態」を想定した綿密な受験パターン構築を模索し続けるべきだ。「ここもダメだったらどうしようか……」「あそこもダメだったらどうしようか……」。一見、後ろ向きではあるが、この親の「おびえ」こそが、中学入試を乗り切るための大切な心持ちになる。

2月1、2日に「安全校」は含まれているか?

中学入試直前なのに……いや、中学入試本番直前だからこそ、わが子の「受験校」のパターンを再度見直してはどうだろうか。近年は大半の学校が「web出願」を導入していて、試験の前日に出願できるところも増えている。わが子の合否状況次第で、翌日の受験校を変更することだって可能なのだ。

さて、わが子の受験パターンを改めて見てみよう。

2月1日午前入試・午後入試、2月2日午前入試・午後入試の計4回の入試の中で、ちゃんと「安全校」(合格確実な学校)を組み込んでいるだろうか。

わたしの考える「安全校」とは、わが子の最近3~4回の模擬試験の平均偏差値を算出し、そこから3~4を引いた数値でも「合格率80%」と判定される学校を指す。

なぜ、2月2日までに安全校を組み込むべきなのか? それは、2月3日以降の入試のほとんどが各校の2回目や3回目の試験に当たり、初回入試合格者の入学手続き入状況を踏まえ合格者数が調整されやすいため、その難易度が「読みづらい」ものになるからだ。倍率が跳ね上がる学校も多い。「安全校」と甘く考えていたが、実はそうではなかった……などということもざらにあるのだ。

参考までに、昨年度(2020年度)で高倍率だった学校の一例を挙げてみよう。すべて2月3日以降におこなわれる入試回のものである。驚くべきは、これらは志願者数を募集人員で割った「志願倍率」ではなく、受験者数を合格者数で割った「実質倍率」であるという点だ。

【2020年度私立中学入試 高倍率入試の一例】
暁星(第2回) 20.6倍 女子美術大学付属(第3回) 12.1倍
日本大学(C日程・女子) 17.4倍 国学院大学久我山(ST第3回・男子) 12.0倍
東洋大学京北(第4回・女子) 17.2倍 法政大学(第3回・女子) 11.8倍
東洋大学京北(第4回・男子) 16.6倍 三田国際学園(第4回) 11.7倍
成城(第3回) 12.4倍 吉祥女子(第3回) 10.3倍
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