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カリフォルニア大デービス校・藤田斉之さん「日本の教育の脆弱性をコロナが露呈した」
2021.02.22

グーグルの教育参入で学位の持つ意味が変わる
――新型コロナによって日本の教育の脆弱性が露呈したと指摘しています。
日本の大学はLMS(Learning Management System)を使ってはいますが、授業だけでなくペーパーレス化に組織として向かっていません。日本では今回の新型コロナで初めてオンライン教育をしなければならなくなりましたが、非常に問題なのは教育に対する社会の認知度のなさ、学位に対する社会の認知度のなさ、そしてオンライン教育の認知度のなさです。
米国ではオバマ大統領時代にConnectED to the Future政策として、小学校から高校までカリキュラムのデジタル化が政府主導で進められました。米国でもコロナで学校は閉鎖されましたが、オンライン教育に対する教員の向き合い方に混乱はありませんでした。親も常にオンラインで教員とつながっていて、子どもがどういう教育を受けているかが一目瞭然でわかる体制が社会としてできています。
大学としての一番の違いは、大学教育に対する学生の思いです。米国の大学生は学びに来ています。中途半端なことでは卒業できず、出席が重要です。大学の基本的な位置づけが違い、現在のグローバル化の流れの中で、日本の大学は対応できなくなっています。
最も大きな変化は、AI(人工知能)やビッグデータ、技術の発達によって、今後の大学教育は学位の持つ意味が変わってくることです。
――日本では学位の重要性を意識することがほとんどありません。
日本は学位と職種が一致しないからです。米国ではスキルアップのために資格を取れば報われる社会で、給与体系にも学位が認められるきっちりした土壌があります。しかし、日本にはそれがなく、学位は給与にも反映されません。これが一番の問題です。
私の専門は英語教授法で、25年くらい前に米国の大学院で学位を取得しました。しかし、今の英語教授法は全然違います。文系の分野でさえ、25年前の学位は意味をなさなくなっています。今後、そのサイクルはさらに早くなるでしょう。
例えばグーグルはGrow with Googleを掲げ、教育に参入しています。実践的で質の高い教育プログラムを無料か安価で提供し始めており、米国の大学が正規の単位として認めるようになっています。グーグルのプログラムを取れば大学の単位に換算されるので、4年以内に卒業できる柔軟な学び方ができるようになりつつあります。在籍期間が短くなれば、短縮した分の授業料を浮かすことができます。米国の大学の学費は高いですから。
そうなると、学位が持つ意味が変わり、同時に学位のサイクルも短くなります。グーグルや大学が提供するプログラムを貪欲に取って学び続けないと、社会から取り残されてしまいます。社会人が仕事をしながら、学んでいくことになります。
