学習と健康・成長

個室・マット・集中用の仕切り… フィンランドの教室レイアウトに学ぶ教育環境の作り方

2021.03.04

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小林 香織
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フィンランドでは、新設・建て替えがあった小学校を中心に、多種多様な教室のレイアウトやアイテムを導入しています。マットの上に寝転んだり、椅子の代わりにバランスボールに座ったり、周囲の音をさえぎるイヤーマフを身につけたり。このような環境は、子どもたちにどんな影響を与えるのか。自宅での実践方法も含めて、フィンランドの教育カウンセラーと日本の空間デザインの専門家にお話を聞きました(写真は廊下の個室スペースで勉強する生徒たち=フィンランド国家教育委員会提供)。

多様化する子どもたちに合わせた新しい教室環境

バランスボールやマット、イヤーマフなどバリエーション豊かなアイテムが導入されつつあるフィンランドの小学校。こうしたアイテムの導入目的について、フィンランド国家教育委員会 イノベーションセンター責任者のAnneli Rautiainen(アンネリ・ラウティアイネン)さんに聞きました。

「一番の目的は、より学習しやすい環境を生徒に提供すること。多様な性質やバックグラウンドを持つ生徒たちがいる近年の状況を踏まえ、近年のフィンランド教育では、“教師がどんな教え方をするか”と共に、“生徒がどんな環境で学ぶか”にも焦点が当たっています。この2点がうまく相互作用することにより、生徒の学習に取り組む姿勢や集中度が向上すると期待されています」(ラウティアイネンさん)

フィンランドの小学校では、少人数で机を寄せ合ったグループワーク授業が中心です。しかし、それがうまく機能するかは子どもたちの性質に依存する傾向があり、非常に活発な生徒が多いグループは、あまり授業に集中できませんでした。そうした課題の解決へ向けて、実験的に幅広い学びの環境を取り入れているのだそう。

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バランスボールを椅子代わりとしたり、パーテーションによって視界をさえぎったりと工夫が施された教室(写真提供:地下智隆さん[Global Teacher Program in FINLAND])
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廊下に設置された個室タイプのスペース。授業に集中できない生徒やパニックを起こした生徒などが一時的に利用することが多いそう(写真提供:地下さん)

一定のメリットは見られるが、まだ実験段階

これらの多様な教室環境は、生徒にどんな影響を与えているのでしょうか。ラウティアイネンさんによると、一定のメリットは見られたそうです。

「例えば、バランスボールやバランスチェアに座ることで思考力が増した、ソファに座ることで生徒たちが議論しやすくなったという事例はありました」(ラウティアイネンさん)

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聴覚過敏気味な生徒向けにイヤーマフが置かれた教室(写真提供:地下さん)

一方で、フィンランド全土でこうした教室環境の導入を進める結論にはいたっていません。その要因として、規模が大きな実験であること、生徒が新しい環境に対応できるよう事前に振る舞い方を教える必要があることの2点が挙げられます。

「多様な教室環境は一見メリットが多いように思えます。しかし現状、教室環境に関する明確な研究結果は出ていませんし、教師にとっては負担増でもあります。さまざまな学習スタイルの可能性は提供するべきですが、評価が一方通行になってはいけないと考えます。この教室環境がどのように機能しているか、教師と生徒が一緒になって検証・評価すべきでしょう」(ラウティアイネンさん)

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