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めざせ、新たな時代の海洋立国 東京海洋大海洋資源環境学部

2021.03.03

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鈴木 絢子
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海洋環境科学科と海洋資源エネルギー学科からなる東京海洋大の海洋資源環境学部は、2017年に新設された学部だ。「資源と環境」という21世紀の最重要課題に、海洋・海洋生物・資源・再生可能エネルギーなどの切り口から取り組む。※写真は、170トンある練習船「青鷹丸(せいようまる)」での海洋学実習。東京湾羽田沖で、水温・塩分の測定や採水を行う装置を海に投入する準備をしているところ(写真提供/東京海洋大)

2021年3月に初めての卒業生を送り出す海洋資源環境学部は、持続可能な海洋開発を担うスペシャリストの育成を掲げる。これは海に囲まれた日本において、もはや国家的な使命といえるだろう。同学部について学部長の田中祐志教授が語る。

 「特に海洋資源エネルギー学科では民間企業などから多くの教員を招き、これまでにない学びを提供しています。レアアースやメタンハイドレートなどの海底資源、海上風力発電のような再生可能エネルギーの活用に関する研究もしています。今後はこうした分野の就職先も充実させたいです」

 机上のグローバルではない「現場主義」

 海洋資源環境学部では、TOEICのスコア600点を4年生への進級要件とするなど、国際化教育にも力を入れている。だが、田中教授は「英語さえできればグローバル、とは思わない」と言う。

 「外国人の考えを知ったうえで、日本人としてどうするかを考えることが重要です。研究や組織のあり方などは、現地で見ないとわからない。本学では海外での研修やインターンシップも実施しています。外国人とのディベートや国際学会でしっかり発言できるように導くのも、我々の務めです」

 この現場主義もあってか、学生の大学院進学率は5割以上と高い。「4年間では足りないという学生が多い」という田中教授の言葉からも、同学部の学びが想像以上に横断的であることがうかがえる。 

品川キャンパスにあるマリンサイエンスミュージアム。貴重な生物の標本や練習船の模型などが展示されている。21年2月現在、入館は予約制だが、学外の人も無料で利用可能(撮影/朝日新聞出版・掛祥葉子) <写真03B_清水さんキャプション>
品川キャンパスにあるマリンサイエンスミュージアム。貴重な生物の標本や練習船の模型などが展示されている。21年2月現在、入館は予約制だが、学外の人も無料で利用可能(撮影/朝日新聞出版・掛祥葉子)

 海洋資源エネルギー学科4年の清水良弥(しみず・ふみや)さんも、その幅広さを実感している一人だ。

 「昔から、謎が多くて神秘的な海が好きでした。入学時に特に関心を持っていたのはメタンハイドレートなどの海底資源です」

 卒業後は大学院へ進学する予定で、講義や研究を通して、石油をはじめとした海洋資源の開発などの知識を深めていきたいと考えている。だが、清水さんの卒業論文のテーマは「海域で発生する地震と地下構造の関係について」。海の中で大きな音(地震波)を発生させ、その音の伝わり方から海底下の構造を調べている。海底探査などの手法は共通しているが、地下資源の分野からは少し離れている。なぜなのか。

 「僕は岡山県出身なのですが、2018年の西日本豪雨で自分の地元も被害を受けました。年々増える災害の怖さを改めて感じて、学問としての『防災』にも興味を持つようになったのです」

 清水さんの興味の幅が広がっても、同学部はそれを受け止めて新たな学びをもたらした。その懐の深さはまさに海のようだ。

 「大学を決めるときには、将来を絞り過ぎないほうがいいと思います。あまり思いつめずに、気軽な気持ちで選んだほうが広がりがあっていい。僕自身、将来は民間企業か研究機関か、地元に貢献するかグローバルに動くか、まだ決めていません。絞り過ぎずに考えていきたいと思っています」(清水さん) 

海洋資源環境学部・海洋資源エネルギー学科4年の清水良弥(しみず・ふみや)さん。英語はあまり得意ではなかったが、現在はオンラインでのディベートをこなせるまでに成長した(撮影/朝日新聞出版・掛祥葉子) <写真03B_田中先生キャプション>
海洋資源環境学部・海洋資源エネルギー学科4年の清水良弥(しみず・ふみや)さん。英語はあまり得意ではなかったが、現在はオンラインでのディベートをこなせるまでに成長した(撮影/朝日新聞出版・掛祥葉子)

海洋資源環境学部の多面的な面白さを、田中教授はクジラの話を例に挙げて説明する。

 「南大洋などで船を止めて観測をしていると、クジラが寄ってくることがあります。知識がなければ『クジラって大きいなぁ』程度で終わってしまうかもしれないけれど、勉強した人は、クジラは何をどれだけ食べているか、広い海のどんな場所にどれだけいるか、どのように回遊しているか、海底に沈んだ巨大な死骸を中心とする局所的な生態系はどうなっているかなどに思いを巡らすことができる。目に見えないところやまだ知らないところに必ず面白いことがあるから、いろいろなことを幅広く学ぶことが大事なんです

 海をハブにすると世界はすべてつながる。生物、化学、物理、地学、社会学に国際法……。海を知ろうとする時、不要な知識はないのだ。 

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