学習と健康・成長

子どもも大人も考えたい 「同意」って何? 理由を聞くのではなく説明を

2021.03.04

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山下 知子
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本当は嫌なのに「うん」と言ってしまったり、無理やり「いいよ」と言わせてしまったり。そんな経験はありませんか? 互いの意思を確認し合って気持ちの良い関係を築く――そんな意味を含んだ「同意」という言葉が、いじめや性暴力の観点からも注目されています。昨年10月には、米国発の「子どもを守る言葉『同意』って何?」(集英社)が日本でも翻訳出版されました。「同意」について子どもにどう伝えたらよいのか。同書にメッセージを寄せた、性教育研究者の村瀬幸浩さん(79)にも話を聞き、「同意」の考え方を探りました。(写真:「子どもを守る言葉『同意』って何?」の表紙(右))

安心して「不同意」を表明できる親子関係を

「同意」の考え方を子どもにどう伝えれば良いのでしょうか。性教育研究者で、元一橋大教員の村瀬幸浩さんは「同意の文化がすぐに日本に広がるのは難しく、大きな意識変革が必要」と前置きした上で、「こうした本を子どもと一緒に手にすることや、『どっちがいい?』と子どもに何か選ばせることがスタートラインになるのでは」と言います。

忙しい朝などは、親は「これを着なさい」と子どもに「YES」を強要してしまいがち。それが続くと、自分の気持ちや意見が尊重されないことが当たり前になってしまい、他人にも同意を求めなくなってしまう可能性が出てきます。村瀬さんは「大人が子どもの同意をきちんととる行動こそが第一歩です」と助言します。

また、「嫌だ」「やりたくない」といった不同意が「不利益」にならない、と子どもが思える関係が作られていることが大事だといいます。ここでいう不利益とは、怒られたり、否定されたりすること。さらに村瀬さんは、理由を聞かれることも不利益に含まれる、とします。「大人の言うことに同意した時は理由を聞かれませんが、同意しないと聞かれることが多い。納得できるように理由を答えるのはしんどく、難しいことなので、子どもは同意の方が楽だと考えてしまいがち。しかし、それで本当の同意になるでしょうか?」

東京都内の私立男子高で講演する村瀬幸浩さん=2018年、東京都港区、塩入彩撮影
東京都内の私立男子高で講演する村瀬幸浩さん=2018年、東京都港区、塩入彩撮影

村瀬さんはむしろ、同意を求めたい親の側がまず理由を説明するべきだ、と指摘します。例えば、寒い日にコートを着たくない子どもがいたとします。子どもが「嫌だ」と言った場合、親は「どうして?」ではなく、「今日は寒くて風邪を引いたら大変だと思うから、着た方がいいと思うよ」などと理由を述べ、それでも、子どもが拒否するのであれば、それは親が退くべきだといいます。「命に関わることであれば強制的にでも従わせざるを得ない時もあります。その時もあとできちんと理由を説明することが大切。常日頃から、大人が子どもの同意を確認することで、子どもも自然と同意を理解し、行動できるようになるはずです。まずは大人から、です」

「同意」の考え、将来にわたって力に

「同意」をめぐっては近年、「性的同意」という言葉も広がりを見せています。キスをしたり、セックスをしたりする時に確認されるべき、お互いの意思のことを指します。性教育に長年取り組んできた村瀬さんは「性行為は、自分のプライバシーを明け渡すこと。どういうことが起こりうるか、トラブルを含めて考えなければならず、性的同意は一般的な同意よりもなお難しいと言えます」と話します。

日本では現在、刑法で13 歳とされている性的同意年齢を引き上げるべきかどうか議論されています。性的同意年齢とは、性行為の同意能力があるとみなされる年齢の下限であり、性行為がどのような行為かを理解し、自分が性行為をしたいか、したくないかを判断できる年齢を指します。13歳は他の先進諸国と比較すると低年齢です。

しかも、中学校では性交について保健の時間で扱っていません。4月から始まる新学習指導要領でも同様です。村瀬さんは「学校で性交についてきちんと教えてもいないのに、性的同意年齢が13歳というのは全くの矛盾。また、年齢を設定するのであれば、どういう能力をその時までに育てるか、という話がなければおかしいのに聞こえてこない」と指摘します。「育てるべき力として、同意の考え方を身につけることは非常に大事。将来にわたって、様々な人と健全な関係を築いていく上で重要な能力です」と話しています。

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