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「話したい」「伝えたい」を引き出す 県立広島大学コミュニケーション障害学科

2021.03.17

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鈴木 絢子
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県立広島大の保健福祉学部には、国公立大学で唯一、言語聴覚士を養成する「コミュニケーション障害学科」がある。資格の概要や学科の学びを詳しく聞くと、学科名に込められた思いや、めざす人材の像が浮かび上がってきた。(写真提供/県立広島大)

社会のニーズが高まる「言語聴覚士」

言語聴覚士とは、聞こえや言葉に困難がある人を指導・支援する専門職で、国家資格の一つだ。その守備範囲は、聴覚障害のほか、脳卒中などによる失語症、声がかすれる音声障害、子どもの言葉の遅れや発音の障害など、幅広い。また、口や舌は食物を取る時に使う器官でもあるため、のみ込みなどの問題である嚥下障害の訓練にも当たる。

県立広島大の保健福祉学部コミュニケーション障害学科は、言語聴覚士国家試験の合格率で何度も100%を達成し、優れた実績を上げてきた。学科長を務める城本修教授は次のように語る。

「現在、約3万4000人の有資格者のほとんどが、成人を対象としたリハビリテーション病院や高齢者施設で働いています。本学の就職状況も同様の傾向で、嚥下訓練ができることを条件とする募集も多いですね。しかし、耳鼻科や福祉施設、療育センターなど、言語聴覚士の存在が必要な施設はほかにもあり、活躍できる領域の拡大は今後の課題の一つでもあります」

1学年30人の卒業生に対し、毎年約600件もの求人が寄せられるという。

コミュニケーションは言葉だけではない

「本学科は少人数制で指導が手厚く、教員同士の連携も密です。4年次からは月に一度の模擬試験などもありますが、資格試験のための講座などはまったくおこなっていません。国家試験の合格率が高いのは、純粋に学生の質が高いからです」

そう誇る城本教授だが「ゴールは資格取得ではない」とも話す。同大では、失語症や聴覚障害のある患者との交流会など、学生が患者と触れ合う機会を設けており、多くの学生が自主的に参加する。

「『話すのが得意』『誰とでも仲良くなれる』と言う学生が、患者さんとうまく付き合えるとは限りません。大切なのは『伝えたい』という気持ちを、患者さん自身に持ってもらえるかどうかです

城本教授の授業では「学生同士が1分間ただ見つめ合う」という実習がある。多くの学生が耐え切れず目をそらしてしまうが、気づかせたいのは「沈黙もコミュニケーション」ということ。

「ほかにも、視線や顔色だけで相手の言いたいことを理解したり、あるいは自分の気持ちを伝えてみたり。『嫌』という拒否の言葉をいろんな気持ちで言ってみると、相手にはどう伝わるかということも試してもらいます」と城本教授は続ける。「言葉の表面的な意味だけにだまされず」、どれだけ相手の気持ちをくめるかを考えさせるのだという。コミュニケーションとは表出されるすべてであり、聞こえたことと発せられた言葉だけを指すのではない。

「だからこそ、学科名も『コミュニケーション障害学科』なのです。めざすゴールは、患者さんのコミュニケーションを支えるという使命感を学生に持ってもらうことです」(城本教授)

コミュニケーション障害学科の城本修学科長。「患者さんが『先生のおかげでここまで話せるようになりました』と笑顔を見せてくれるのが何よりうれしい」と語る
コミュニケーション障害学科の城本修学科長。「患者さんが『先生のおかげでここまで話せるようになりました』と笑顔を見せてくれるのが何よりうれしい」と語る

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