学習と健康・成長

デジタル教科書で何ができる? 教員の感じたメリットと課題、可能性

2021.03.24

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有馬 ゆえ
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文部科学省は、学習者用デジタル教科書を2024年度から小学校で新たな指針に応じて導入する方針を固めました。教科書が紙からデジタルになると、どんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。現場の声に加え、日本デジタル教科書学会会長で富山大学教職大学院准教授の長谷川春生さん、光村図書出版執行役員の森下耕治さんに、デジタル教科書の可能性について聞きました(写真はデジタル教科書を使う様子=富山大学人間発達科学部附属小学校提供)。

教員が考えるデジタル教科書導入のメリットと課題

紙の教科書を電子化したデジタル教科書には、3つの種類があります。1つは教科書がデジタル化された「学習者用デジタル教科書」、2つ目は動画資料やアニメーション、ワークシートなどの教材がついた「学習者用デジタル教科書・教材」、3つ目は教員が使う補助教材「指導者用デジタル教科書」。いずれも、タブレット端末などの画面に表示され、スマホのように拡大したり、ペン機能を使って書き込んだりすることができます。

これらの教材に対して、子どもたちはどんな反応を見せるのでしょうか。まず、現場の声として富山大学人間発達科学部附属小学校で教鞭を執る阿久津理先生に、「学習者用デジタル教科書・教材」を実験的に導入した授業について聞きました。

――授業では、どのようにデジタル教科書・教材を使用したのですか?

阿久津:小学6年生の社会科の授業で、日本史の学習に3時間使用しました。

従来の授業では、配布した資料プリントに一人ひとりが書き込みをしながら考える時間を設けた後、黒板に貼った資料の拡大コピーの前で発表をしたり、グループで意見を交換したりしながら思考を深めていきます。

一方、デジタル教科書を用いた授業では、まずペン機能を使って気付いた点をデジタル教科書に書き込んでもらいました。その後、子どもが書き込みをしたデジタル教科書の表示画面を教壇のテレビに映し出し、それをみんなで見ながら話し合います。

デジタル教科書_1
デジタル教科書を映したテレビを前に発表をする子どもと阿久津先生。映し出された教科書の図版には子どもの書き込みがあり、何の話をしているのかが聞く側にも伝わりやすい。(富山大学人間発達科学部附属小学校提供。使用教材は「東京書籍 学習者用デジタル教材 デジタル教科書+教材一体型 新しい社会6」)

――子どもたちはどのようにデジタル教科書を使っていましたか?

阿久津:子どもたちは、1時間目から抵抗なくデジタル教科書を操作。指導しなくても、イラストを拡大してじっくり観察したり、ペン機能の色を変えて自分の意見、友達の意見、発表する箇所、と書き込みをしたりしていました。

直接書き込めるという特性を活かし、デジタル教科書をノート代わりに使うような様子もうかがえましたね。

――デジタル教科書に対してどんな感想を抱きましたか?

阿久津:授業後、子どもからは「いつもより理解が深まった」という意見がありました。

私が特にいいなと感じたのは、拡大表示できることと、発表がスムーズに進むことです。自分自身が印をつけた資料をそのまま発表に使えるので、意見を言いやすかったように感じました。発表を聞く側も、資料に視覚情報が加わっているため、理解しやすかったようです。

意見を発表しやすく、理解しやすくなれば、発表時間の時短にもつながります。そのため、限られた授業時間内で、より多くの子どもが発言できるようになる可能性も感じました。

プリント類が必要なくなれば、教員が印刷物を準備する手間が省け、労働環境の改善につながるでしょう。

デジタル教科書_2
デジタル教科書を使って授業をする阿久津先生(富山大学人間発達科学部附属小学校提供)

――デジタル教科書導入にまつわる課題はありますか?

阿久津:教員は、デジタル教科書を利用した授業方法の研究を進めなければならないでしょう。

例えば、社会科では毎回、書き込み作業のあるプリントを配布し、終わったプリントはファイルにまとめ、振り返り学習の資料として活用しています。これと同じ学習効果を生むためにはどうすればいいのかは悩みどころです。

また、授業のノートやプリントは、保護者にとって学習の足跡を知るツールにもなっています。しかし、デジタル教科書は、タブレット端末を開かなければ、何を勉強しているのかわからない。家庭学習も含め、家庭とのつながり方も考え直さなければならないと感じました。

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