学習と健康・成長

デジタル教科書で何ができる? 教員の感じたメリットと課題、可能性

2021.03.24

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有馬 ゆえ
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デジタル教科書の特徴と可能性

教科書会社では、デジタル教科書を制作するにあたり、どのような工夫をしているのでしょう。2005年からデジタル教科書の発刊に携わってきた光村図書出版執行役員の森下耕治さんに伺いました。

――「デジタル教科書・教材」には、どんな特徴があるのでしょうか。

森下:光村図書出版のデジタル教科書・教材では、学習効果を上げるために3つの工夫をしています。

1つは、ペン機能を使って文章にマーカーを引いたり、書き込みをしたり、画像を挿入したりできること。読み取った内容を自分の好きな色や太さのペンを使いながら、教科書画面上に楽しく表現できる、学習のモチベーションにつながります。

例えば、小学1年生の国語の「じどう車くらべ」では、バスや乗用車、トラック、クレーン車を比較した説明文を「車の種類=赤」「車の仕事=黄色」「車の特徴=青」のように色分けしながら、構成を整理できます。色を分けると「他の人はどんな色を使ったんだろう?」と比較したい気持ちになり、グループワークへの意欲も上がります。

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小学校1年生の国語に掲載されている「じどう車くらべ」(学習者用デジタル教科書+教材 小学校1年国語 光村図書出版)

弊社のデジタル教科書には、要点整理を助ける「マイ黒板」という機能もあります。教科書から言葉や文を抜き出し、一つの画面上で整理できるため、内容の理解につながります。

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デジタル教科書の本文をなぞると、マイ黒板(右画面)に抜き出しができる(学習者用デジタル教科書+教材 小学校1年国語 光村図書出版)

線を引く、文を抜き出すといった活動は「読む」行為がベースになっているため、子どもが長時間集中して何度も教科書本文を読むことになり、読解力の向上につながると考えています。

2つ目は、音声や映像資料があること。例えば英語では、単語や文章の読みが聞けるだけでなく、登場人物の会話をアニメーション映像から理解することができます。書写では、お手本を書いている映像が、筆の向きや力のいれ具合などをくりかえし確認できると好評です。

他社のデジタル教科書を見ても、音声や映像が学びを充実させていますね。算数・数学ならば、立体を回転させたり、容積をビジュアル的に表示させたりできるのがいい。音楽では、簡単な作曲ができたり、さまざまな楽器の音を聞くこともできたりします。

――2つの特徴から、デジタル教科書は一人ひとりの得意、不得意に寄り添う可能性を秘めていると感じました。3つめの特徴も教えてください。

森下:3つ目は、教科書の表示変更や文章の読み上げができることです。資料を拡大できるのはもちろん、文字の大きさ、色、フォント、行間などを変えたり、教科書の地色を変えたり、音声の読み上げ機能のスピードを変更したりもできます。

また、すべての漢字には、ふりがなをふることができます。この機能では、ふりがなも漢字を構成する要素だと勘違いしないように、ふりがなと漢字の色を分けて表示できます。

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ふりがなをつけたり、教科書の地色を変えたりと、表示を自分好みにカスタマイズできる(学習者用デジタル教科書+教材 小学校1年国語 光村図書出版)

こうしたカスタマイズ機能は、支援が必要な子ども以外も、かなり積極的に使うといいます。人の認知能力には多様性があり、文字、音声、映像と理解しやすいインプット方法が異なるからです。

白地の紙だと、視覚的にまぶしさを感じて教科書を読みにくいという子どももいます。「デジタル教科書で文字色を反転表示したら、小学5年生で初めて文章を読めた」という話もあり、こうした機能が大きな意味を持つことを改めて知りました。

――デジタル教科書には、どのような可能性があると考えていますか?

森下:私たちは、デジタル教科書で、子どもたちの学びの入り口が広がることを願っています。文字に音声、映像といった資料を加えることで、子どもの興味を広げ、主体的に学べる窓を増やしたいという思いです。

これから取り組みたいのは、子どもたちがデジタル教科書上で文章に線を引いたり、問題を解いたりしたログを使い、個々の学習の成果を可視化すること。それを本人にフィードバックしたり、子どもと先生、保護者が話し合う材料にできたりしたらいいですね。子どもの得意なところをのばし、苦手なところをフォローすることにもつながります。

将来的にデジタル教科書、ワークや学校内外のテストなどの情報が、個人情報を除いてビッグデータ化していけば、日本の子どもたちの学力の傾向が分析できるはず。そこから日本の教育の課題がわかれば、子どもたちの能力をもっと活かす教育を実現できるかもしれません。

(編集:ゆきどっぐ+ノオト)

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