新しい教育のカタチを考える

正解のない時代に「自分は何がしたいのか」を追究 本郷中高「社会部」

2021.03.22

author
葉山 梢
Main Image

東京都豊島区にある私立男子中高一貫校の本郷中学・高校には「社会部」という一風変わった部活があります。日々の研究発表やビジネスコンテスト出場、ニュースの現場への訪問などを通じ、「自分は何がしたいのか」を追究。先行き不透明な時代に活躍する人材が育っています。(写真は東京都渋谷区のモスク「東京ジャーミイ」で話を聞く部員たち=同校提供)

「差別反対」が唯一のルール

「共学の学校では男女が日々関わり合っていても、性別役割分業の規範が押しつけられると本で読みました」

「女子校や男子校だと性別役割の押しつけはないかもしれないが、大学に行ったら共学なので、そこで押しつけられることにならないか」

社会部の部員約30人は週に3回ほど放課後に集まり、個人研究の発表会をしています。この日のテーマは、各国のジェンダー意識。一部の部員が一昨年から取り組んでいるLGBTQの研究が広がり、3月下旬には共学校や女子校の生徒たちとオンライン上で合同部活、4月には上野千鶴子・東大名誉教授との意見交換会の予定があるため、事前学習を兼ねてこのテーマを選んだといいます。それぞれが選んだ国のジェンダーにまつわる話題を調べて発表し、議論しました。

時折、「いい質問だ」などと声を上げるのは顧問の松尾弥生先生です。「森(喜朗)元総理の(女性蔑視)発言についてどう思った?」「結婚しようと思っている彼女から『私の姓に変えて』と言われたら、君たちはどうする?」などと、最近話題になったニュースも取り入れながら話を進めます。

部員たちは自分で作ったスライドをもとに発表する=2021年3月8日、本郷中学・高校
部員たちは自分で作ったスライドをもとに発表する=2021年3月8日、本郷中学・高校

昨年から一貫してLGBTQの権利について研究しているという高2の高荷(たかに)洸星さんは「生物本質主義とトランス女性のリアル」と題し、生まれた時に割り当てられた性別と自分の性の認識が異なるトランスジェンダーの女性の著作や動画を紹介。「大切なのは傾聴。当事者たちは、属性以上に自分そのものを知ってほしいと言っている」と訴えました。発表を聞いた部員の一人は「人を見た目や属性で区別していたと気づいて、今恥じている」。医学部志望の部員も多いため、松尾先生は「お医者さんになるなら人権意識は本当に大事だよ。フラットな目で見てね」と声をかけていました。

「あらゆる差別に反対するというのが、この部の唯一のルール」と松尾先生。「あとはとにかく生徒たちがやりたいと言うことをやらせている。できるだけ現場を踏み、現場から学んでほしい」と言います。この春も、モスクの見学や裁判の傍聴、東日本大震災の被災地の市議とのディスカッション、東京都中野区議にパートナーシップ条例について聞くなど、多くのフィールドワークを計画しています。

バックナンバー
新着記事
新着一覧
新着一覧

ページトップ