部活と勉強 両立するのか

ベネッセ・木村治生さん「部活動と学習時間の関係はほとんどない」

2021.03.23

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中村 正史
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成長の機会を平等に提供するシステム

――部活動は家庭環境や地域的な要因に左右されずに、スポーツや文化活動の機会を平等に提供する点で、世界に誇れる仕組みだと評価していますね。

活動時間の長さや教員の負担など部活動の課題が多いのは事実ですが、一方で生徒の貴重な成長の機会を平等に提供できるという点では、誇れる仕組みだと思います。私たちの調査でも、小学生の習い事は民間経営のサービスに委ねられ、家庭環境に左右されやすいことがわかっています。習い事の平等性や公共性という観点からは、中学・高校の部活動は世界的にも類のないシステムだと思います。

しかし、部活動が教育的意義を持ちすぎ、活動が過剰だったことと、担い手を教員に依存しすぎていることが大きな問題です。生徒の成長にいいものであれば、本来はそれに応じたリソースを投下すべきですが、教員の善意に頼っています。さらに問題が複雑なのは、教員の中に部活動に喜びを感じる人がいることです。

――部活動に対しては教員、生徒、保護者の間でも意見が分かれます。

数年前に教員を対象とした調査で教員になった理由を尋ねたところ、4分の1くらいが「部活動の指導がしたいから」を選択していました。自身が部活動の体験を持っていると、部活動にやりがいを見いだして一生懸命になりやすいです。その一方で、6~7割の教員は、指導が負担であると答えています。

――部活動はどうすべきでしょうか。

生徒と教員の双方にとって、活動量が適切かを考える必要があります。教員の負担については、部活動にやりがいを感じる教員が多いのは事実なので、教員がどこまで関わるべきかを考え、手が足りないのなら外部の人の手を借りるのもいいと思います。部活動に多くの人が関わり、相互にチェックしながら、生徒にとっての部活動の意義を複数の目で見て、考えていくべきです。

――部活動と学習時間、成績との関係はどうですか。

私たちの調査から総じていえるのは、学習時間が成績に与える効果は、それほど大きくないということです。もちろん、学習時間は一定量は必要ですが、学習の仕方の方が成績を左右します。目標を定めて、現在の自分の位置を確認して、目標との距離をどう埋めていくかを考えることは、部活動にも大人の仕事にも共通する大事なことです。時間数だけでなく、どうやって勉強するかという方略が重要です。

――総括すると、部活動の方向性をどう考えますか。

部活動は生徒たちにとって特別なポジションにあります。部活動のいいところを残しながら、課題を解決していくことが大事です。生徒にとっても先生にとっても、強制的にやらされる部分は減らしたほうがいいでしょう。そのうえで目標に向けて努力し乗り越えていく、勝つことが目的でなくていいので、自分の能力を客観的に見て、仲間と連携して、課題を乗り越えていく場にするのがいいと思います。

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