『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

科学の伝道師が語る、柔らかく生きることのススメ

2021.04.05

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桜木 建二
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京都大学で火山学・地球科学の講義が人気ナンバーワン。各メディアへも盛んに登場して科学のおもしろさ、学ぶたのしさ、自然の驚異と脅威などについて積極的に発信。明快で情熱的な語り口にファンは多い。
自他ともに認める「科学の伝道師」として、八面六臂の活躍を見せる鎌田浩毅教授に、話を伺ってきたぞ。

自他ともに認める「科学の伝道師」

なぜかくも精力的に、いきいきと伝道師役を続けているのか。バイタリティの源をぜひ知りたいところだ。

「それは簡単な話。科学が、学ぶことが、そして知そのものが、楽しくてしかたないものだからですよ。

そして僕には、ある種の使命感もある。ふたつの意味から、科学の伝道を進めなければと考えているのです。

ひとつには、広く好奇心を満たす知的な営為こそ、人に喜びや希望をもたらすことをもっと知ってもらいたい。つまりは、教養を得る素晴らしさを伝えて回りたいんですね。後の人生が必ず豊かで楽しくなるから。

もうひとつには、自分の専門分野において、広く知ってもらいたいメッセージが明確にある。

日本ではそう遠くない将来に大きな地震がきっとやってきます。その際に何とか生き延びるための対策と対応を、きちんとしておいてもらいたい。

日本に暮らす人にとって必須の知識を、専門家として伝えておかなければという気持ちが強くあるのです」

なるほどそれで「伝道師」を任じて、発信を続けているわけだ。

学生時代、打ち込める目標は見つからなかった

ただ、聞くところによると鎌田さんは、もともと火山学・地球科学を志していたわけではなかったそうな。

人に伝道して回るほど打ち込むものと、どう出逢ったのか。生涯を賭す対象との出逢いのタイミングは、早いほうがいいわけでもない?

「そうですね、たしかに僕が研究対象を定めたのはずいぶん遅かった。

そもそも高校時代あたりまでは特に目標も定まらず、単純な暗記モノは苦手で公式に則れば解ける物理や化学のほうが得意だったので、理系への進学を決めたというくらいのこと。

成績は悪くなかったので東大理科I類を目指しました。が、受験直前に思うように成績が伸びず、あっさり理科Ⅱ類へ受験先を変更。

Ⅱ類の生物系にとりたてて関心はありませんでしたが、自分の好みより入れるところへ入ることのほうが重要との判断です。

一途に打ち込むものが早くに見つかる人は、もちろん邁進すればいいでしょう。でも大半はそううまく見つからないのでは?

だったら、好きなことよりできることを優先する。そういう柔軟性は生きていくうえで大切ですよ」

入省後、出張で阿蘇山に登り火山の虜に

何事もまずは、やれることをやる。コマを進めることが大事。そう説く鎌田さんは、大学時代にはまだ終生打ち込むものと出あっていなかった。

「大学時代はやりたいことも見つからず、勉強は超低空飛行でした。のちに専門とする火山になんて、まるで関心が向いていなかった。

『とりあえず就職しよう』と通産省、現在の経済産業省へ入りました。

そこで研究所に配属され、出張で阿蘇山に登ったことを機に、火山の虜となりました。

そこから猛勉強して専門家となり、京大から声がかかって研究・教育の道へ。何がきっかけになるかは、本人にもさっぱりわからないものです」

自分を変えるチャンスはいつどこに転がっているかわからないということか。

「そうです。自分にとって大事なものは、見つかるときには見つかる。

そのときまでゆっくり待っていたらよい、と言いたい。それまでにムダなものは一つも無いのです。

受験の成功や資格取得は成功への確実な切符ではない

もちろん、出あいを求めて勉強したりあれこれ調べたりと、みずからアクションを起こす気持ちは尊いものです。

ただ、一所懸命探したからといって、必ずしも成果が上がるわけではないというのもまた事実。

世界は偶然に満ちていて、人の思い通りになんてなかなかならないものです。そのことも知っておくべきだし、受け入れなければいけない。

努力して求める行為が尊いことと、求めても必ずしも得られるわけではないという事実は、どちらも世の中の真実としてあります。

それを踏まえた上で、待つしかない。そして待つなら、楽しみにして待っているように。

要は偶然をプラスに捉えることですね。世の中は偶然と想定外に満ちているのだから、それをおもしろがってしまうに限る。

そう開き直れたら、予定通りにいってもいかなくても、オーケーと思えます。僕のモットーに「起きることは全て正しい」というのがあります。

自分の打ち込むべきものが見つからないときは、それが正しい。見つかれば見つかったで、それも正しいと考えるのです。

見つからないときに腐ったり不安になったりするのではなく、もともとそんなものだよと考え、そのうち何か見つかるだろうと切り替える。

受験や資格に合格することは、長い人生の成功への確実な切符になんてならないということです。

可能性の間口を広げるひとつの手段である、くらいに捉えておくのがいいのでしょうね」

鎌田さんの柔らかい思考法、次回も開陳してもらうぞ。

(山内宏泰)

『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』
鎌田浩毅さん
鎌田浩毅さん

話を聞いた人

鎌田浩毅さん

京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・京都大学名誉教授

1955年、東京都まれ。地球科学者、火山学者。筑波大学附属駒場中学・高校卒業。東京大学理学部地学科卒業後、通産省(現・経済産業省)に入省。地質調査所主任研究官を経て、41歳で京都大学教授に就任。現在は京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・京都大学名誉教授。主な著書に、『理系的アタマの使い方』(PHP文庫)、『新版 一生モノの勉強法』『座右の古典』(ちくま文庫)、『一生モノの英語勉強法』『一生モノの受験活用術』 (祥伝社新書)、『理学博士の本棚』(角川新書)、『地学ノススメ』『富士山噴火と南海トラフ』(ブルーバックス)、『地球の歴史』『理科系の読書術』(中公新書)、『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書)など。「科学の伝道師」として、各メディアで科学を分かりやすく楽しく解説する語り口に定評がある。

『ドラゴン桜2』

作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)、「ドラゴン桜公式マガジン」(note)で連載中。

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