『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

「スランプさん、ようこそ」と受け入れよう! 科学の伝道師が語るマインドチェンジ術

2021.04.19

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桜木 建二
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前回、「科学の伝道師」としてメディアなどで人気の鎌田浩毅さんに、柔らかな思考法の極意について伺った。
世界は偶然に満ちている。だから、どう転んでもプラスに考えられるマインドこそが大事だと、鎌田さんは教えてくれた。受験勉強などを進めていてのめり込むと、つい完璧主義な考えに陥りがちだが、いつもそう己に厳しくしなくてもいいということか。

最初に決めた目標にこだわりすぎる必要はない

「物事に邁進するのはすばらしい。ですが同時に、思い通りにいかないときに悲観しすぎないことも重要。

最初に決めた目標にあくまでもこだわるという必要はないのです。

たとえば大学受験なら、入ってしまえばあとは何とかなるのだから、『どうしてもこの大学のこの学部に!』と決めつけないほうがいい。

実際のところ専攻なんていつでも選び直しが利きますし、そもそも人生というか生き方だって、何歳になっても選び直せます。

僕の専門の地球科学の観点から世界を眺めても、同じことが言えます。

地球では約38億年前に生命が誕生し、以来、火山が噴火したり隕石が降ってきたりといろんな天変地異を経て、なんとか生命は途絶えず生き延びてきました。

すべては不測の、つまり想定外の事態です。

我々がいまこうして存在するのは偶然のおかげだなと、地球の歴史を知れば知るほど痛感しますよ」

偶然を楽しめると出会いは向こうからやってくる

そうか、生命の存在からして偶然の産物であるなら、私たち個人は偶然を受け入れ、それをできるだけ楽しむよう心がけるしかなさそうだ。

「偶然を楽しむ気持ちになれれば、好きでのめり込むものも自然と見つかるはず。そう思えれば気が楽になりますよ。

人は能動的なだけでなく、ときに受動的な姿勢をとるのも大切。世界に対して受け身になると、ふといいものが降りてきてくれたりするものです。

僕が火山という研究対象に出あえたのも、阿蘇山が向こうからやって来てくれたという感触が強いです。

今は噴火スタンバイ状態の富士山が、向こうからやって来ています。ご縁があった、ということなのでしょうね」

受け身の姿勢でいい。そう言ってもらえると、かなり精神的に助かる人も多いんじゃないだろうか。昨今はとかく何でも能動的に勝ち取れ!というのが美徳と考えられがちだから。

ただし、だ。

姿勢は受け身であってもいいが、あまり考え方をネガティブにするのはよくないとも、鎌田さんは言う。

想定外の出来事も、ひとまず受け入れ楽しんでみる

世界に対して受け身なほうが、よりよいものを得られるものだ。そう鎌田さんは教えてくれた。

同時に、考え方はネガティブよりもポジティブに寄せたほうがいいだろうとも。

「単純な話、人はたいていポジティブなものにひきつけられますから。

ネガティブに考えているとどんどん深みにハマって、悩みやねたみ、破壊的な衝動に気持ちが向いてしまう。それよりもプラス志向でいたほうがいいことはたしかでしょう。

受け身でいいがポジティブに。そんな基本姿勢をとれば、ずいぶん生きやすいですよ。

たとえば受験勉強をしていると、スランプに陥ることってよくありますよね。

そういうときは、『スランプさん、ようこそ』と、ポジティブに状況を受け入れるのがいい。

スランプとはつまり、勉強のしすぎ。自分の能力以上のことを続けていたので、身体が悲鳴を上げた状態なわけです。

なのでスランプの対処法は、一晩でも一週間でも一か月でも、気の済むまで休んでしまうこと。するとまた心身が元気になって、やる気も出てきます。

『こんなことじゃダメだ!』と無理を続けると、症状がズルズルと続いてしまいます。

それよりも『スランプさん、ようこそ』と受け入れ、その状況を自分の体に必要があってのことだから楽しんでしまおう、とするのが得策なのです」

要は、一番先の目的を見失わないようにすることが肝要なのだ。そう鎌田さんは続けてくれたぞ。

学びを通してこそ、いきた時間をすごせる

「私たちの生きる目的は、もちろん人それぞれでしょうが、大きくくくれば『いきた時間を過ごすこと』と言って差し支えないでしょう。

誰しも自分の過ごす時間が、すこしでもいきいきとした有意義なものであってほしいですよね。

そのために、どんな気持ちでどう時間を使うかをしっかり見定めることが大事です。

いきた時間を過ごすにあたって、勉強すること、何かに熱中して学ぶことは、いい選択肢ですよ。僕の立場からすれば、それが最良の時間の使い方だと言いたいです。

英国の哲学者フランシス・ベーコンは言いました。『知識は力なり』と。まったくその通りだと思います。

勉強して得た知識は、必ず自分の力になるからです。

知識を得るとは、長い時間の中で培われた人類の遺産と財産を身につけることにも繋がっている。こんなに楽しく、またタメになることはありませんよ」

全力で向き合えば、受験勉強は一生モノの学びに

学びに没頭することこそ、「いきた時間」を過ごす最良の方法だと鎌田さんは説いてくれた。

だとすると、ここで疑問がひとつ。

受験勉強というのは学ぶ教科・範囲が限られており、「点を取るのための勉強」になりがちではないか。

受験にとらわれず広く「学び」に目を向けたほうがいい?

「そんなことはありません。

むしろ受験勉強をするべき時期を迎えたら、そこに全精力を集中させたほうがいいでしょう。そのほうが、あらゆる面で効率的かつ効果的です。

というのも、受験勉強には、その年代に学ぶべきものすべてが含まれているから。

受験勉強はだいたい10代のうちにするわけですが、これにしっかり打ち込めば、それが誰にとっても人生の基礎となります。

僕は『人生で役立つことは全て受験勉強で身につけた』と講演会でいつも語っています。

たとえば、本を読むことは学びや人格形成の基礎中の基礎ですが、国語の問題とちゃんと向き合えば良質な読書の時間をちゃんと確保できます。

国語のテキストや試験問題に出てくる文章は選りすぐりのものですから、しっかり味わうのがいい。そこから著者への興味関心も広げていけます。

算数や数学だってそうです。

僕は自然科学を専門とする研究者ですが、研究に必要な数的処理能力は、高校時代までの勉強で身につけたものが今でも役に立っています。

(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜2」から
(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜2」から

受験勉強で得る学びのノウハウは社会に出ても通じる

そうした勉強内容の『コンテンツ』が得られるだけではありません。

受験勉強に真剣に臨むと、勉強の計画立案、効率アップの方法、時間の有効活用術、モチベーションの維持のしかたなどを、自分で編み出さなければならなくなる。

それら学びの『ノウハウ』も、受験勉強を通して身につけられる貴重なものです。

学びのノウハウは一生モノです。勉強の進め方も仕事の進め方も、基本は同じだということは、社会人なら誰しも感じているところですよね。

受験勉強を活用して一生モノのコンテンツとノウハウを会得して、ぜひいきた時間をたくさん過ごせる人になりましょう」

学生時代の学習や受験勉強が、自分の「生きる基礎」を築いてくれるのだ。

目の前のものに全力で向き合えば、あらゆる道はひらけるということなのだぞ!

(山内宏泰)

「スランプさん、ようこそ」と受け入れよう! 科学の伝道師が語るマインドチェンジ術
鎌田浩毅さん
鎌田浩毅さん

話を聞いた人

鎌田浩毅さん

京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・京都大学名誉教授

1955年、東京都まれ。地球科学者、火山学者。筑波大学附属駒場中学・高校卒業。東京大学理学部地学科卒業後、通産省(現・経済産業省)に入省。地質調査所主任研究官を経て、41歳で京都大学教授に就任。現在は京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・京都大学名誉教授。主な著書に、『理系的アタマの使い方』(PHP文庫)、『新版 一生モノの勉強法』『座右の古典』(ちくま文庫)、『一生モノの英語勉強法』『一生モノの受験活用術』 (祥伝社新書)、『理学博士の本棚』(角川新書)、『地学ノススメ』『富士山噴火と南海トラフ』(ブルーバックス)、『地球の歴史』『理科系の読書術』(中公新書)、『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書)など。「科学の伝道師」として、各メディアで科学を分かりやすく楽しく解説する語り口に定評がある。

『ドラゴン桜2』

作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)、「ドラゴン桜公式マガジン」(note)で連載中。

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