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今春の医学部入試は? 志願者数は下げ止まり 河合塾の医学部専門校舎長に聞く

2021.03.29

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山下 知子
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コロナ禍で行われた2021年度医学部入試。多くの現役生にとっては学校が休校となるなど、厳しい状況の中での受験となりました。医学部志望者が減るとも増えるともいわれた今回の入試。来年度以降の動向も含め、医学部受験に長年携わってきた神本優・河合塾麴町校校舎長(52)に、3月初旬に話を聞きました。

神本 優

話を聞いた人

神本 優さん

河合塾麴町校校舎長

(かみもと・まさる)1992年学校法人河合塾に入塾。千葉校(現在の千葉現役館)、横浜校、町田校などを経て、2019年から医学部専門校舎の麴町校校舎長。医学部志望者のチューターとして30年近く指導にあたり、多くの医学部志望者を合格へと導いてきた。

国公立大前期は微増、薬学部も人気

――コロナ禍で、医学系統人気は下がるとも上がるともいわれていました。21年度入試をどう分析していますか?

文部科学省が2月24日に発表した国公立大志願状況などをもとにした河合塾のまとめによると、前期日程では前年比101%で微増でした。6年連続で減ってきて、7年ぶりの増加。下げ止まりましたね。

コロナで、向こう10年は就職難が予想されています。医師といった資格志向はより高まるでしょう。2008年のリーマン・ショック後も理系人気が高まりました。それと同様の動きですね。「文低理高」が進み、医学部人気も上がるはずです。ただ、すぐには進路を変更できないので、動きが顕著に出てくるのは、今の中学3年、高校1年ぐらいからだと思います。

コロナ禍で、医師の過酷な働き方や病院経営の大変さなどもクローズアップされました。生徒たちをみていると、プライドや、難関だからというゲーム感覚で医師を目指す受験生は少なくなりそうです。本当に医師になりたい子、人を助ける仕事をしたいと考えている子が残っていくでしょう。ただ、生徒以上に保護者の医学部志向は根強いものがあります。首都圏はもちろん、就職先が少ない地方も同様で、医学部人気は今後も続くとみています。

大学入学共通テストで英語の試験開始を待つ受験生たち。席の間には赤い×印が付けられていた=2021年1月、東京都文京区の東京大、鬼室黎撮影
大学入学共通テストで英語の試験開始を待つ受験生たち。席の間には赤い×印が付けられていた=2021年1月、東京都文京区の東京大、鬼室黎撮影

医療系でいうと、今春の入試で志願者が大きく増えたのは薬学部です。河合塾のまとめでは前期日程で前年比109%。和歌山県立医科大に薬学部が新設された影響が大きいと思いますが、それを差し引いても伸びがありました。コロナ禍でワクチンへの期待が高まり、創薬分野を目指す受験生が増えたと考えています。一方、私立大は6年制課程が中心で、薬剤師免許が取れる手堅さから今後も女子受験生を中心に人気は続くのではないのでしょうか。

学校のオンライン対応も影響? 一部私立大の難易度は下がる

――昨春は休校などもあり、現役生を中心にかつてない厳しい受験生活になりました。

模試の結果をみると、今年の受験生は学力的には影響を受けたと思います。やはり、昨春の休校が響いていますね。

学年始めに休校があったことで、学習ペースをつかむまでに時間がかかったことがまずあるでしょう。オンライン授業も始まりましたが、録画した動画の配信では、学習内容の定着がかんばしくありませんでした。学習リズムをつかむためにも、決められた時間に双方向性のあるオンライン授業を行っていないと厳しいのでは、と感じました。

今春の結果をみると、学校のオンライン授業の取り組みが、合否に影響したといえます。休校期間中に紙だけで宿題を出していた高校の生徒はやはり理解が不十分で抜けが大きいと思ってしまいます。

今春の医学部入試は? 志願者数は微増 河合塾の医学部専門校舎長に聞く

――入試の難易度はどうだったのでしょうか?

私立大は、問題が相当易しくなりました。ただ、慶応義塾大や日本医科大などの私立トップ大学は例年通りで、易化したのは偏差値的に中堅から下位の大学医学部です。

首都圏のある大学医学部では、数学で満点が続出したと聞きますし、化学で有機化学分野を出さなかった大学もありました。これには驚きました。また、問題数を多くして受験生のスピードで学力をみていた大学は、例年よりも問題量が4分の1以上カットされていました。

ただ、これらは今回のみの動きで、次回の入試は例年通りになるとみています。また、国公立大には問題の易化は見られませんでした。事前に発表されていましたが、東京医科歯科大が理科で学習内容の一部を出題範囲から除いたぐらいです。

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