いまこそ、医学部

「医志コース」設置で医学部合格者が大幅増 大阪・四天王寺中高

2021.04.01

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庄村 敦子
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医学部を目指す生徒のための「医志コース」を中学1年から設けているのが、大阪市の私立中高一貫女子校、四天王寺中学・高校です。1期生が挑んだ2020年度入試では、医学部合格者が前年度に比べ、大幅に増えたといいます。医志コースの取り組みを学校に聞きました。(生徒の学年は2021年3月現在。写真は、19年度の「四天王寺病院見学ツアー」で手術室を見学する生徒たち=四天王寺中学・高校提供)

大学医学部ツアーや医師の講演会

大阪市天王寺区にある中高一貫の女子校、四天王寺中学・高校。593年に聖徳太子によって創建された四天王寺の吉田源應大僧正が1922年、「聖徳太子1300年御忌記念事業」として天王寺高等女学校を設立したのが始まりだ。関西地方の医学部志望の女子に人気が高く、医師の子どもが多く通うことで知られている。

2019年度入試の国公立大医学科合格者数は50人で全国12位だったが、20年度入試では67人に増加して全国4位。慶応義塾大などの私立大にも延べ126人(防衛医科大学校7人を含む)が合格した。

20年に医学部合格者数が大きく増えたのは、医師を目指す生徒のための「医志コース」を14年に中学に設置したことが大きい。20年度入試で同コースの1期生が受験に臨んだのだ。医志コースの定員は35人で、10人が京大など国公立大医学科に合格した。

中川章治教頭は「医志コースは、本校の教育方針である『円満で深い人間性を備えた女性の育成』『個性を充分伸長できる教育の実践』を具現化したもの。人を救う心の教育を礎としており、病院や医学部の見学や体験ができるのが特徴です」。

2019年度に開かれた「大阪大学医学部見学体験ツアー」では、赤ちゃんの模型を使った体験も=四天王寺中学・高校提供
2019年度に開かれた「大阪大学医学部見学体験ツアー」では、赤ちゃんの模型を使った体験も=四天王寺中学・高校提供

医志コースの生徒は、中2の時に週1コマの探究型の授業で、医療や科学の研究を行う。中3で「京都大学医学部訪問ツアー」「四天王寺病院見学ツアー」、高1で「大阪市立大学医学部医学科見学ツアー」「障害者福祉施設訪問見学」、高2で「大阪大学医学部見学体験ツアー」を実施。高1~2を対象とした「近畿大学医学部体験学習」などもある。中学生は全員参加で、高校生は希望者のみ。他コースの生徒も参加できる。このほか、医師の講演会を年数回、医療系を中心としたキャリア講座を年10回ほど開催している。中川教頭は「これらの体験などによって、強い使命感と高い倫理観を備えた医師を志し、医師になりたい気持ちが強くなります」と話す。

今春、医志コースから神戸大医学科に合格した福山ゆなさんは「病院見学などで医師の大変さも知り、医師になる覚悟を決めることができました。医学部志望者が集まっていたため、受験期に不安などを相談したり、励まし合ったりすることができたのもよかった」と話す。

20年度はコロナ禍のため施設訪問などができず、9月に高1~2の希望者を対象に「大阪大学医学部オンライン特別講座」を実施した。医学部教授の講演を聴いたり、OGの医学生と5~6人のグループでディスカッションしたりした。キャリア講座もZoomでの開催となった。

コロナ禍のもとで行われた「大阪大学医学部オンライン特別講座」=2020年9月、四天王寺中学・高校提供
コロナ禍のもとで行われた「大阪大学医学部オンライン特別講座」=2020年9月、四天王寺中学・高校提供
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