部活と勉強 両立するのか

武蔵・杉山剛士校長「部活動と勉強の相乗効果で人は成長する」

2021.03.30

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中村 正史
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進学・進級時期を迎え、部活動をどうするか悩んでいる生徒や保護者もいることでしょう。部活動の役割とは何でしょうか。部活動と学習は両立できるのでしょうか。それは学校によって違うのでしょうか。中高生や保護者の関心が高い部活動と学習との関係について、埼玉県立浦和高校から私立武蔵高校・中学の校長になった杉山剛士氏に聞きました。(写真は武蔵高校・中学の校舎)

杉山剛士

話を聞いた人

杉山剛士さん

武蔵高等学校中学校校長

(すぎやま・たけし)武蔵高等学校中学校、東京大学教育学部卒、同大学院教育学研究科修士課程修了。専攻は教育社会学。埼玉県の社会科教諭になり、県教育局文教政策室長、県立熊谷西高校校長、県教育局高校教育指導課長、県立浦和高校校長を経て、2019年4月から現職。

勉強か部活動かは捉え方が狭い

――埼玉県立浦和高校と私立武蔵高校・中学という、公立と私立の二つの進学校の校長を務めた経験から、部活動の意義をどう考えますか。

部活動は日本人の多くが経験してきています。楽しかった人もいれば、つらかった人もいます。保護者としての経験も含めて、意義があると思う人から、ないと思う人まで、部活動はいろいろと話せるトピックです。 

私は長年、部活動を見てきて、意義があると感じています。理由の一つは、中高生が同じ興味関心を持つ良き仲間をつくる場であること。居場所ができ、ほっとすることができます。

二つ目は、人として成長させる人間形成機能を持っていることです。少し前に『やり抜く力GRIT』という本が話題になりましたが、著者は人生の成功者のケーススタディを通じて「人を変えるのはIQではなく、やり抜く力」であり、それは授業ではなく、課外活動で培われるということを述べています。日本でいう部活動であり、学校行事です。

浦和高校の卒業生の若田光一さんは、宇宙飛行士になって日本人として初めてコマンダー(船長)になった基盤は高校時代の部活動にあると、いろんなところで話しています。彼は野球部員でしたが、キャッチャーの補欠で、3年の夏にはベンチにも入れませんでした。しかし、部活動を通じて学んだチームワークや集中力が今日まで続いていると言います。これは典型例ですが、部活動には人として成長させる力があるのです。

――部活動と学習時間の関係をどう考えますか。

部活動の活動時間と学習時間について、いくつか研究者の調査があると聞きましたが、学習の時間だけ調べても難しいと思います。時間の過ごし方や学習への向き合い方まで変数に入れる必要があります。学習を自主的にしているのか、やらされているのかでも違います。

経験的にいえば、時間のコントロールをできるなら、部活動と勉強の相乗効果によって生徒は成長します。この二つは対立関係ではなく、部活動も勉強もすることによって成長するのです。

例えば浦和高校には「少なくとも三兎を追え」という言葉があります。勉強、部活動、学校行事の三つの良さの相乗効果で、人間的成長が生まれるという考え方です。部活動のチームワークは勉強にも生きていて、練習が終わった後に教室で一緒に学び合う文化があります。部活動のチームワークは学習集団力とも響き合うことを、浦和高校は体現しています。

部活動と勉強という問題設定をすると、捨象する要素があるので、気をつけなければいけません。勉強か部活動かというと、捉え方が狭くなります。

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