一色清の「このニュースって何?」

スエズ運河でコンテナ船座礁 → 地球儀を見てみよう

2021.04.02

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一色 清
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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、スエズ運河で座礁した大型貨物船。手前は救援船=スエズ運河庁提供)

地図では分からない新航路

スエズ運河は1869年に開通しました。日本の明治維新のころです。地図を見れば、だれもが「ここに運河があればいいのに」と思う場所です。ずいぶん古くから運河をつくろうという構想はありましたが、それを実現したのがフランス人で地元エジプトに人脈のあったレセップスという人です。スエズ運河会社という会社をつくって、建設に乗り出したのです。10年かけて完成し、ヨーロッパとアジアの貿易が盛んになりました。

レセップスが次に目をつけたのが、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸をつなぐ細長い地形のパナマでした。ここも地図を見れば、だれもが「運河があればいいのに」と思う場所です。大西洋と太平洋を行き来するためには南アメリカ大陸南端の岬を回らないといけなかった航路が、運河ができれば一気に短くなります。レセップスは建設に取りかかりましたが、うまくいかず、アメリカ合衆国が引き継ぎ、1914年に開通しました。この運河もとても重要な航路となり、今では世界の海上貿易量の約4%がここを通っています。

スエズ運河とパナマ運河は世界の海上交通を一気に便利にしました。ほかに海上交通を便利にする新しい航路はないでしょうか。ここは世界地図ではなく、地球儀を見てください。たとえば、日本とヨーロッパを結ぶ海のルートはどこが近いでしょうか。日本から南に向かうより、北に向かって北極海を通ってヨーロッパに行くほうが近くないですか。一般的な世界地図では、北や南に行くほど実際より大きく描かれるので、北極海ルートは遠く見えますが、実際の地球をそのまま小さくした地球儀では、南回りより北回りのほうが近いことが分かります。

ではなぜ今まで北回りの航路を使わなかったのでしょうか。それは氷があって通れなかったからです。地球温暖化が状況を変えようとしています。氷がとけ始めていて、船が通れるようになってきました。スエズ運河は政情の安定しない中東にあり、これまでも戦争などにより通れない期間がありました。今回の事故により、北極海航路への注目が一段と大きくなる可能性があります。地球儀を見て、スエズ運河やパナマ運河の重要性を確かめるとともに、北極海という新しい航路が注目されていることも覚えてください。

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