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「建築環境学」研究、成果はコロナ感染防止の一手にも 早稲田大学田辺新一研究室

2021.04.14

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原子 禅
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◇早稲田大学創造理工学部建築学科 建築環境学 田辺新一研究室 

 「建築環境学」とは、環境と快適性の両立を目指す研究分野。「建築デザインのように華やかではない研究」(田辺新一教授)が世界を動かし、新型コロナウイルスの感染防御に結び付いた。

田辺新一研究室の研究テーマは「建築環境学」。田辺教授のほか、学部生、修士・博士課程の大学院生、研究員、講師など50人を超えるメンバーで研究を進める。

「『建築環境学』は聞きなれない言葉かもしれませんが、省エネルギーと安全・健康・快適を両立させた建築に関する研究を行います。これは、化石燃料に頼らない脱炭素社会の実現のために重要なものとなります」

このように田辺教授は話す。研究内容は、建築物の断熱性能の向上や再生可能エネルギーの導入によるゼロ・エネルギー化の推進や、睡眠環境の改善、心身共に負担の少ないオフィス環境の実現など多岐にわたる。

「ここでは、建築だけでなく、人間に関する研究も重要なテーマです。学部生・院生たちに伝えているのは、『私の言うとおりにはやらないように』ということ。指導教員の発想からはみ出したところに独自の発見があるはずです」

「大学では10年先の社会を見据えた研究ができることが魅力のひとつ。失敗を恐れずに取り組んでもらいたい」と田辺教授(写真/ブロウアップ・小林大介)
「大学では10年先の社会を見据えた研究ができることが魅力のひとつ。失敗を恐れずに取り組んでもらいたい」と田辺教授(写真/ブロウアップ・小林大介)

「新しい価値を探す研究」に喜び

田辺研究室所属の秋元瑞穂さんは、修士課程へと進んだ2019年9月から1年間、田辺教授も学んだデンマーク工科大へ留学した。

「田辺先生は、『私だけではなく、複数の人のアドバイスを聞くべき』と常々話されていたことに加え、研究室では海外の研究者や学生がこちらに来たり、逆にこちらから行ったりと交流が盛んなので、自然と海外に目が向きました」

留学先での経験は刺激的だったという。

「田辺研究室は、基本的に建築が専門の方たちの集まりですが、留学先のグループでは化学や機械工学など他分野が専門の方も多く、ディスカッションなどは、私とは異なる視点からの意見もあり、考えの幅が広がりました」 

修士課程2年の秋元瑞穂さん。「今後は省エネルギーに関する研究もやっていきたい」という(写真/本人提供)
修士課程2年の秋元瑞穂さん。「今後は省エネルギーに関する研究もやっていきたい」という(写真/本人提供)

現在は、「換気と睡眠」の関係について研究を進めている。

「寝室内の環境を整え、睡眠の質を高めることは、心身の健康維持のほか、知的生産性の向上にもつながります。上質な睡眠に寄与する環境要素は、温度、湿度、音、光など多岐にわたりますが、適度な換気も効果があることがわかってきています」

創造理工学部建築学科を選んだのは、「絵を描くことが好きで、建築学科ならそれを生かせると思った」から。学部入学後、建築学科の中でも様々な分野の授業を受けるなか、面白さを感じたのが建築環境学だった。

「テーマを見つけ、調査・研究を行い、論文などにまとめ、発表する。新しい価値を探すこの一連の作業が自分にはとても楽しいもの。今後は別の研究テーマにもチャレンジしていきたいと考えています」

修士課程修了後は、博士課程に進みたいと秋元さんは考えている。

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