大学入学共通テスト 傾向と対策

特例追試・国語、過去問と同じ文章二つ 元作問委員はどう考える?

2021.04.19

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山下 知子
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2021年度大学入学共通テストの特例追試の国語で、過去の大学入試センター試験で出題されたことのある文章(素材文)が二つ使われていたことが分かりました(記事はこちら)。センター試験の国語の作問委員を務めたことがある大学教授は匿名を条件に取材に応じ、「公平性から問題がある」と指摘すると同時に、作問現場を知っている立場から「やむを得ない部分もある」と言います。(写真は、1993年度以降の過去問が収録されている2018年版センター試験・国語の「赤本」)

話を聞いた人

Xさん

公立大学教授

専門は国文学。博士(文学)。2000年代に大学入試センター教科専門委員。

夜も眠れない過酷な作業

――特例追試に、過去の大学入試センター試験で出た素材文と同じものが二つ使われていました。どう受け止めましたか。

率直に言って驚きました。特例追試には2014年に作った緊急対応用の問題をあてた、とのことでしたが、まず問いたいのは、大学入試センターがどのくらい重きを置いて緊急対応用の問題作りに取り組んだのか、ということです。

通常の作問作業にプラスされたのか、別に部会を立ち上げて作ったのかは分かりません。別組織を立ち上げて、それでも一つの試験問題に二つも過去の素材文を使ったのであれば驚愕です。もし通常の作問作業にプラスして作るよう指示されたのであれば、委員からしたら「やめてくれ」という話。コロナ禍ではなく、14年という時間的に余裕のある中だったからこそ、通常の態勢とは別の組織をつくり、試験問題として周到に作られるべきだったと考えます。

問題となった特例追試の2題は、ある予備校のテキストに使われていたとのことでした。センター試験の問題は非常によく練られています。だからこそ、多くの受験生の目に触れる、そうした可能性を考えないといけません。過去に使われた素材文を二つ入れた時に、このことをどの程度意識していたのか。問題そのものは無難に差し替えてありますが、センター試験に出たという重みをセンター自身がもっと受け止めるべきです。

間隔を空けて行われた大学入学共通テスト第2日程の英語で、試験開始を待つ受験生たち=2021年1月30日、東京都文京区の東京大学、瀬戸口翼撮影
間隔を空けて行われた大学入学共通テスト第2日程の英語で、試験開始を待つ受験生たち=2021年1月30日、東京都文京区の東京大学、瀬戸口翼撮影

――作問は過酷な仕事だと聞きます。

本当に大変です。機密性の高い仕事で、非常にストレスがかかります。議論はごりごりやりますし、見つけた素材へのダメ出しは延々と続けられ、山のような「捨て問」(すてもん=使われなかった問題)ができます。私も素材探しに悩み、都内の図書館や書店をあてどなくさまよったことがあります。夜眠れない日も増えました。そもそも作問委員は入試問題作成の専門家ではありません。専門家になっていくのです。

地方の大学教員はかなりの頻度で出張も伴います。当初は「出張ついでに国会図書館に行って……」などと考えますが、そんな時間も余裕も当然ゼロ。加えて近年、大学自体が非常に忙しくなっています。「大学の仕事以外、引き受ける余裕はない」という声はよく聞きます。私が参加した頃よりも、作問委員への負荷は確実に重くなっています。

――特に現代文の作問は難しいと聞きます。センターもいろいろと対応してきたようですが。

現代文は、良い問題を作るための素材を探すのが本当に大変です。良いものが見つかったら、7割完成したと言っても過言ではありません。「これは受験生に読んでほしいな」「ここは線を引いて問うことができるかな」。そう思いながら選んでいくのですが、良い文章というものは限りがあって、各大学で争奪戦です。

センターは長年、バッティングを避けるために最大限の努力をしてきたと思います。01年からは国語出典データ作成委員会をつくり、全素材について国公私立大学の問題をデータベース化しています。

その上で、08年8月に「過去の大学入試センター試験や大学の個別学力検査で使用された素材文及び教科書に掲載された文章であっても(中略)使用することもあり得る」と発表しました。いよいよ追い詰められてきたのだと推察します。大学が多様な入試形態も取り入れ、入試の回数が増えていますし、過去の素材文を使うことを否定しきれない状況があるのは事実です。

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