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朝日中退予防ネットワーク副委員長に就任した山本繁さん「予防的アプローチが重要」

2021.04.16

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豊 吹雪
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新型コロナウイルス感染症の拡大で、2020年度はほとんどの大学が対面授業を取りやめ、オンライン授業に切り替わりました。学びに対する満足度が上がりにくかったことはもちろんのこと、教員との人間関係づくりや学生同士の交流もままならず、アルバイト先を失うなど経済的な要因も相まって、中途退学(中退)をする若者が増えるのではないか、と心配されています。高等教育からの中退を未然に防ぐ「中退予防」をライフワークとして、さまざまな活動をしてきた山本繁・大正大学特命教授に、コロナ禍での大学教育のあり方について聞きました。

山本 繁さん

話を聞いた人

山本 繁さん

大正大学特命教授

(やまもと・しげる)1978年生まれ。慶応義塾大学環境情報学部卒。教育NPO代表として2007年から大学・専門学校の全学改革や中退予防に従事。中央教育審議会「高大接続特別部会」臨時委員、大学教育再生加速プログラム委員などを歴任。著書・編著に『中退白書2010 高等教育機関からの中退』『つまずかない大学選びのルール』ほか。

中退率は学科ごとに大差 コロナ禍で増加の懸念

――2人に1人以上が大学に進学する時代ですが、あまり認識されていないのは、どのくらいの若者が入学した大学を卒業しないで中退しているか、だと思います。4年間(医学系は6年間)で卒業しない学生の割合は、国公私立すべての大学を合わせて約1割でしょうか。

1割というのは全大学を平均した数字なので、国・公・私立別では差がありますし、大学ごと、学部ごと、学科ごとによって、大きな差があります。1%以下の学科もあれば20%を超えている学科もあります。また、一般入試(一般選抜)で合格した学生よりAO入試(総合型選抜)を経て入学した学生の方が中退率は高い傾向にありますし、男子の中退率は女子の約2倍です。男子だけ見れば30%を超えている学科もあります。

これはコロナ禍に見舞われる前から分かっていた傾向で、2020年度はコロナ禍による経済的困窮という要素が加わったわけです。

私は過去に、中退した若者の追跡調査を行ったことがあります(『中退白書2010 高等教育機関からの中退』NPO法人NEWVERY内日本中退予防研究所)。その時に、中退に至った問題が発生してから実際に退学届を出すまでに、平均して約11カ月かかっていることが分かりました。コロナ禍というその時にはない要素が加わりましたが、上記の傾向をそのままあてはめると、20年4月以降に中退につながる問題を抱えたとして、実際に退学届を出すのは今年2月以降になります。

昨年夏以降、大学関係者の間では中退者数の増加への懸念が高まっていましたが、文部科学省の統計では4~10月の中退者数は2万5008人と前の年より2割以上減っていました(「朝日新聞デジタル」21年1月9日)。コロナ禍で退学届を出す傾向が全く変わり、中退者が本当に減ったのなら喜ばしいことですが、もうすぐ21年3月までの中退者数が発表されます。例年以上に増えるのではないか、という心配は消えていません。

もう一つ心配しているのは、10代、20代の自殺者数が増えていることです。これは雇用環境の悪化が明確に結びついていることが指摘されています。私が中退予防に取り組みだしたきっかけは、ニートや引きこもりの若者の中に、中退者が多かったことにあります。中退することで背負うキャリア形成上のリスクの高さは、若者本人はもちろん、社会的にもあまり認識されていないと思いますので、安易な中退を未然に防ぐことがいかに重要か、もっと訴えていきたいと思っています。

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