学習と健康・成長

コロナ禍の子どもたちへ フジコ・ヘミングさんがチャリティー動画を配信

2021.04.21

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山下 知子
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コロナ禍が長期化するなか、子どもたちに音楽を届けたい――。ピアニストのフジコ・ヘミングさんが開いたチャリティーコンサートが4月11日から、インターネットで無料公開されています。武蔵野市立第一小学校(東京)の子どもたちも参加。視聴者はインターネット上で寄付ができます。寄せられた善意は子どもやシングルファミリーを支援する団体や、動物愛護団体に贈られます。無料公開は7月末まで。(写真は演奏するフジコ・ヘミングさん=2021年1月、東京都武蔵野市、山下知子撮影)

コンサートは1月初め、無観客の中、検温や消毒などの感染対策をした上で東京都武蔵野市の日本キリスト教団東美教会で開かれました。2階の礼拝堂にグランドピアノや飛沫(ひまつ)防止のための大型アクリル板が持ち込まれ、4Kシネマカメラ8台と十数本の集音マイクを使って収録が行われました。

100年前の生地をリメイクした黒と白の衣装に身を包んだフジコさんは、C.A.ドビュッシー「月の光」とM.ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」、F.リスト「ため息」、同「ラ・カンパネラ」、F.ショパン「ノクターン Op.9-2」の5曲を披露しました。多くの人が一度は聴いたことがあるクラシックの名曲ばかりです。

フジコさんはスウェーデン人の父と日本人の母のもと、ドイツ・ベルリンで生まれ、5歳から日本で育ちました。国籍の壁や戦争、貧困、難聴など多くの困難に直面。長く不遇な年月を送りますが、ピアノを弾き続け、1999年に60代でメジャーデビューを果たすと大きなブームを巻き起こしました。

新型コロナウイルスの感染拡大で、昨年はフジコさんの公演も相次いで中止に。そんな中、無観客で開いたコンサートを昨年9月に有料放送のWOWOWでオンエアしたところ、「癒やされた」「やすらぎをもらった」といった反響が多く寄せられました。

フジコさんのドキュメンタリー映画「フジコ・ヘミングの時間」を撮った映画監督の小松莊一良(そういちろう)さんは「先の見えない窮屈な日常が続く今だからこそ、心とろける音楽でいつもの自分自身を取り戻してほしい。フジコさんの音色は、苦難の多い人生を歩んできたからこその包み込むような温かさがあると思う」と話します。WOWOWの番組でナビゲーターを務め、親交のあった東美教会牧師の陣内大蔵(じんのうち・たいぞう)さんと話し合い、実行委員会を立ち上げて、昨秋からチャリティーコンサート開催に向けて動き始めました。

コンサートには、映画「フジコ・ヘミングの時間」のサントラに楽曲提供した生田流箏曲演奏家の吉永真奈さんと、地元の武蔵野市立第一小学校吹奏楽団の6年生(当時)有志も参加しました。

撮影にのぞむ、吉永真奈さん=2021年1月、東京都武蔵野市
リハーサルにのぞむ吉永真奈さん=2021年1月、東京都武蔵野市

6年生有志はこの日のために「TENKA合唱団」を結成。ふだんは楽器演奏が中心ですが、合唱の練習を重ね、マスクとフェースシールドをつけて参加し、「冬景色」「赤とんぼ」「ふるさと」の3曲を歌いあげました。「赤とんぼ」はフジコさんが好きな歌の一つだということで選んだそうです。顧問の庄司こずえ先生は「コロナ禍で、コンクールなどはすべてなくなってしまった。子どもたちにとって、最高の場を頂きました」。

子どもたちは事前にフジコさんの自伝を読んでコンサートに臨み、フジコさんの演奏に真剣な表情で耳を傾けました。安藤七音(なお)さんは「世界中で活躍している人と一緒にできたのはうれしい」。平原英奈さんは「緊張はしなかった。いろいろなことが中止になったけど、フジコさんの演奏を目の前で見ることができたので大満足」と笑顔を見せました。

合唱する、武蔵野市立第一小学校「TENKA合唱団」の子どもたち=2021年1月、東京都武蔵野市
リハーサルに励む武蔵野市立第一小学校「TENKA合唱団」の子どもたち=2021年1月、東京都武蔵野市
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