学習と健康・成長

折り紙は「空間認識能力」を育む? 1枚の紙から生まれるクリエイティビティ

2021.04.26

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夏野 かおる
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非認知能力にも影響、折り紙がもたらす4つのメリット

好きを突き詰めたことで、クリエイティビティ(創造力)あふれる作品を生み出した加納さん。折り紙にはさまざまな教育的効果がありそうだが、具体的にはどんなものがあるのでしょうか。

東北大学加齢医学研究所で、脳の発達や加齢のメカニズムを追う瀧靖之(たき・やすゆき)教授によると、折り紙に親しむことは、4つの側面で脳に好影響を及ぼす可能性があると話します。

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東北大学加齢医学研究所の瀧教授

「折り紙が脳にもたらす影響は主に4つ考えられます。1つ目は空間認知能力の向上です。折り紙を通して、平面から立体を作り出すプロセスを繰り返し経験することにより、平面-立体の紐づけが容易になると考えられるでしょう。その結果、たとえば、『地図を見ながら自分の位置を把握する力』などに好影響をもたらすかもしれません。

2つ目は実行機能の強化です。実行機能とは、ごく簡単に言えば『ルールに沿って動く』ための能力。計画を立てて実行したり、計画に反する行動を取らないように自制したりする力がこれにあたります。折り紙作品を完成させるには、各ステップを計画通りに進めていかなければなりません。折り紙を通して訓練を重ねることで、実行機能が強化される可能性があるのです。

3つ目は、近年注目が高まっている非認知能力≒やりぬく力(GRIT)の向上です。脳科学の知見によると、一般に非認知能力と学力は相関すると言われています。これは難しい問題でも投げ出さずに取り組み、最後までやりぬく力が身についているかどうかが、学力にも影響する説からです。むろん、『折り紙をすれば頭がよくなる』と短絡的に考えるのは危険です。ただ、難しい作品をスモールステップで作り上げていき、最終的にすごいものが出来上がる感動が、子どもによい影響を与えるのは事実だと思われます。

そして4つ目は、巧緻(こうち)運動の成長です。巧緻運動とは、指先で行う細かな動きのことです。いわゆる『手先が器用』というのは、巧緻運動が得意なことを指します。器用/不器用は生まれつきのものと考える方が多いのですが、現在の脳科学では、脳には可塑性(変化する力)があり、何歳からでも訓練をすれば伸びるという考え方が主流です。緻密な作業を繰り返す折り紙は、巧緻運動の訓練に適した遊びなのです」

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