わが子を算数・数学嫌いにさせない習慣

順列・組合せに頼らない 「素朴に数える」ための3本柱

2021.05.07

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芳沢 光雄
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算数や数学は、公式や解法を暗記し、数字を当てはめて正しく計算できれば、正解にたどり着ける――。パターン化した入試対策の影響か、受験生はそんな「暗記数学」のわなに陥りがちです。人工知能(AI)が急速に普及するなか、今後求められる算数・数学の力とはどんなものでしょうか。数学者で、小学生から大学生まで幅広く数学の面白さを教えてきた桜美林大学リベラルアーツ学群の芳沢光雄教授が、「AI時代に必要な数学力」を説きます。(タイトル画:吉野紗月)

PやCの公式は使わない

今回は、「数える」ことに焦点を当てて考えてみよう。多くの高校生は1年生の数学で、順列・組合せを学ぶ。そして、順列記号Pや組合せ記号Cの公式を用いた練習問題を行う。しかし、そのようなタイプの練習ばかりを最初から行っていると、「数える問題を解くときは、PやCを用いないといけないのではないか」という偏った考えに陥ってしまうことが往々にしてある。実際、大学入試で、PやCを用いる必要がない問題で、無理にPやCに頼った解答を書こうとしたために誤答になった答案を数多く見てきた。

一方、数学には、主に有限の世界を対象にした「離散数学」という分野があり、符号理論や暗号理論の基礎として発展している。この分野の本質は数えることであり、素朴に数えることが要点となる。とくに、Ⅰ「帰納的に数える」、Ⅱ「2通りに数える」、Ⅲ「対称性を利用して数える」の3つがその柱となる。その立場から離散数学を解説した書『離散数学入門』(講談社ブルーバックス)を出版したこともあって、それぞれの例を順に紹介しよう。

●Ⅰの例 1歩で1段または2段のいずれかで階段を上る。ただし、2段上ることは連続しないものとする。下からN段までの階段の昇り方の数をNで表すとき、5を求めてみよう。

1=1 2=2 3=3
までは、易しく分かるだろう。そして、
4=4段目に上る最後の1歩が1段の場合の数
 +4段目に上る最後の1歩が2段の場合の数
 =3+(2のうち、2段目まで1段→1段と上る場合の数)
 =31=3+1=4
5=5段目に上る最後の1歩が1段の場合の数
 +5段目に上る最後の1歩が2段の場合の数
 =4+(3のうち、3段目に上る最後の1歩が1段の場合の数)
 =42=4+2=6
が分かる。

●Ⅱの例 アルバイト店員が何人か在籍する年中無休のお店で、次の形態で1週間のスケジュールを組むとする。
(ア)アルバイト店員は、誰もが1週間にちょうど3日出勤する。
(イ)何曜日でも、ちょうど30人のアルバイト店員が出勤する。
以上の条件のもとで、アルバイト店員の総人数nはいくつになるかを求めてみよう。

(田中、月)、(田中、水)、(田中、土)のような、(アルバイトXの名前、Xの出勤曜日)の組の個数を2通りに数えてみる。(ア)よりその個数は3×n個である。一方、(イ)よりその個数は30×7個である。したがって、
3×n=30×7
が成り立つからn=70(人)が分かる。

●Ⅲの例 正五角形をそれ自身にぴったり一致させる移動の方法の数はいくつかを求めてみよう。ただし、全く動かさないのも1つと数える。

表を表に重ねる移動の場合の数は5で、表裏を取り替えて重ねる場合の数も5であるので、合計で10となる。

いかがだっただろうか。何かの対象を数える問題では、「帰納的に数える」「2通りに数える」「対称性を利用して数える」の3つの方法が解決の鍵になることを紹介した。数える問題を見たとたんに、順列記号Pや組合せ記号Cに関する公式に当てはめようとする姿勢はよくない。数える問題の世界は、もっとずっと広いのである。

続いて、これら「3つの柱」の応用問題にも挑戦してみよう。

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