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大学入試センター・荒井克弘客員教授「共通テストの作問体制は抜本的に変わった」

2021.04.30

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中村 正史
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「学力の3要素」を改革の柱に実施された最初の大学入学共通テストは、問題形式が大きく変わったにもかかわらず、平均点は意外に高い結果に終わりました。思考力より、読解力や情報処理能力を問われたという声も高校現場などから聞かれます。大学入試センター試験の問題作成にかかわってきた荒井克弘・大学入試センター客員教授は、試験の性格が本質的に変わったことを指摘します。(写真は初めての共通テストに望む受験生)

改革の柱「学力の3要素」は文科省の拡張解釈

――共通テストはセンター試験の延長線上にある後継試験と思われていますが、そうではなく、試験の性格が本質的に変わったということですか。

センター試験とは違う問題作成体制になったということです。現在も試験問題を作成するのは大学教員です。そのことに変わりはありませんが、部会内の協力関係がどのように変わったのかはわかりません。重要なのは、共通試験の一つの要素であった学習指導要領が大きな存在に変わり、共通テストが学習指導要領のツールに成り下がったのではないかという懸念です。

共通テストの2枚看板だった英語4技能試験も記述式の出題(言語表現)も、もとをたどれば、どちらも学習指導要領が掲げる重点課題でした。それが共通テストの看板になったということ自体に、共通テストの危うさが表れています。その点は、いまなお「実施主体」であるはずの大学に十分留意いただきたいことです。

高大接続は、高校教育から大学教育への誘導のプロセスです。ただし、高校教育を延長しても大学教育に接続することにはなりません。

――入試改革の柱とされた学力の3要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体的に学ぶ態度)も恣意的なレトリックであると指摘しています。

学力の3要素が小学校から大学教育までを貫く教育目標だと、高大接続答申に書いてあります。学力の3要素はもともと、小・中・高の教育課程の目標を定めた改正学校教育法(2007年)の第30条2項からの抜粋です。3要素が小・中・高の学校教育にとって大事な目標であるのはわかりますが、それが大学教育にも適用できると考えるのは不可解です。学校教育法にもそのような記述はありません。行政の拡張解釈としかいいようがないところです。

共通テストを見舞った最大の異変は、試験の問題作成に行政が介入したことでしょう。学力の3要素が大学教育にも通用すると答申に書いたのは、行政が介入する根拠をつくりたかったからです。次期の学習指導要領を徹底させるには、共通試験を自らのテリトリーに引き込むことが最良の策と考えたのでしょう。

大学教員以外は試験問題に関与するな、と言いたいわけではありません。いまのアプローチが高大接続の改革に必要なステップなのか、疑わしいのです。

共通試験は高大接続を支える要です。試験問題は高校と大学の教育課程を媒介する役割を負っています。高校教科書をめくれば、ポロリと試験問題が落ちてくるわけではありません。高校科目と大学の専門科目の間をつなぐためには、学術の専門家である多数の大学教員を必要とします。

今回の高大接続改革は、そういう地道な高大接続を考慮せず、学力の3要素一つでこの問題を片づけようとしました。小・中・高までの教育課程と、大学の教育はやはり違います。これを同じだと強弁するのは強引すぎる設定です。改革の目的が、高大接続問題の外にある、と思わせるような疑いさえ浮かびます。

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