腕試しforフィフティーン

問題【国語】エッセイ文を読み解く

2021.05.03

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40都道府県から生徒が集う西日本有数の予備校・高松高等予備校と朝日新聞が、高校受験に役立つページを用意しました。各教科の問題と解答はもちろん、各問についての解説も充実していて、手応えはバツグン。保護者の皆さんも中学生向けと侮らず、ぜひお子さんとチャレンジしてみてください。

問題 次の文章を読んで、あとの問いに答えよ。

 ある日、先生が言った。
「ひとみちゃん、サラサラッと①お薄(うす)を点(た)てて、一服ずつごちそうしてちょうだい」
 ひとみちゃんは「はい」と答えて水屋へ消えた。やがて、静かに障子戸が開いて、茶(ちゃ)碗(わん)と棗(なつめ)を手にした彼女が現れ、いつものようにお点(て)前(まえ)が始まった。柄(ひ)杓(しゃく)を蓋置きにコトリと置き、膝前の畳に両手をつき、お辞儀した。
(あれ?)と思った。薄いベールが一枚はがれたように、彼女の輪郭がどこかすっきりしていた。肩や腕から力みがとれて、自然でなだらかな線になっていた。頭を下げた彼女のしなやかな動線が、私の目の中に、残像となって残った。
 その動きに目が吸い寄せられた。茶(ちゃ)筅(せん)通しする細い指の先まで神経が通っていた。指の動きが繊細な表情を見せる。決められた動作をしているだけではなく、一つ一つの動きに彼女の血が通っている感じがした。心を大切に温めるように両手で茶碗を包み込み、中の湯をじっくりとまわす。背筋が美しかった。高校生の彼女が、引き締まった大人の女の顔をしていた。
 誰も口を開かなかった。釜の湯が煮えて、シュンシュンと鳴っていた。何かが一本ピーンと張り詰めたような空気の中で、皆、彼女の点前に見とれていた。
(ずーっとこうして見ていたい)
 と思った。みんなも同じことを思っているような気がした。
(これが「素質」なんだ)
私は、彼女が初めてお稽古に現れた日に言った言葉を思い出した。
「テレビのドラマで茶道をやってるのを見たことがあって、その時からあこがれてたんです」
 カラオケで歌うことは誰でもできる。だけど、同じカラオケの曲で、鳥肌が立ち涙がにじむほど、人の心を揺さぶることのできる人は少ない。料理だってそうだ。腹を満たすものを作ることは誰でもできるが、食べた人の心を元気にし、感動まで与えるような料理を作る人はそう多くない。

(森下典子『日々是好日』による。)

問1 ①の様子を表す場面に見られる表現上の工夫について述べよ。

問2 ②とあるが、なぜか。

ヒント 詩歌に用いられる表現技法を思い浮かべて読みましょう。

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