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メディア分析を地域の課題解決に生かす 兵庫県立大学井関崇博研究室

2021.06.16

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白石圭
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◇兵庫県立大学環境人間学部社会デザイン系

先日幕を下ろした大人気漫画「進撃の巨人」。そんな身近なものも題材にして、送り手と受け手との関係性を築く「メディアコミュニケーション」を研究している。そのねらいとは。※写真は井関崇博准教授のゼミ。卒論の題材は広告、まちづくり、漫画、アイドルなど幅広い(井関さん提供)

学内広報誌制作がNiziUの研究につながった

井関准教授のゼミ生は、3年次に冊子やウェブ記事、動画などを実際に制作する活動を行う。4年次の卒業研究でメディアを分析する前に、制作側の考えを知っておく必要があるからだ。3年次に同期の学生とともに同大の学内広報誌「兵庫県立大通信 1460」の制作に関わった元ゼミ生・岩谷紗希さん(2021年3月卒)は、「誌面の企画から、デザイナーとの打ち合わせなどゼミの学生が主体となって制作を進めました」と話す。

企画の立ち上げは難航した。担当号のテーマを学園祭に設定。同大では姫路工学キャンパスの「工大祭」と神戸商科キャンパスの「商大祭」の二つが同時並行的に3日間開催される。双方の魅力をどのように誌面で伝えるか。

「最初は、フローチャート形式の誌面を考えていました。読者にいくつか質問を投げかけて、回答していくとおすすめの催しものにたどり着くという構成です。しかし、その企画を編集委員会にプレゼンしたところ、『東西キャンパスの分断が今の大学の課題。互いの交流を促すような内容にしてほしい』と指摘されました」(岩谷さん)

卒業研究の発表をする岩谷紗希さん。「今まではコンテンツを見る側でしたが、作る側の視点ももつことで、アイドルの見え方も変わりました」(井関さん提供)
卒業研究の発表をする岩谷紗希さん。「今まではコンテンツを見る側でしたが、作る側の視点ももつことで、アイドルの見え方も変わりました」(井関さん提供)

岩谷さんらの属する環境人間学部は、姫路工学キャンパスに近いところにある。神戸商科キャンパスの商大祭のことは、あまり知らなかった。

「神戸に足を運び、企画の関係者や実行委員などに取材しました。それによって『工大祭vs商大祭』という、東西対決をコンセプトにした企画を考えつきました」

誌面では、西・姫路代表の工大くんと東・神戸代表の商子ちゃんという2人のキャラクターが登場。両キャンパスを回りながら、最後は2人で打ち上げ花火を見るというストーリー仕立ての広報誌が完成した。大学という一団体の課題やニーズを捉えたうえで企画を磨きあげ、提案した「作品」となった。

岩谷さんらが作成した「兵庫県立大通信 1460」。イラストレーターの選定、発注なども学生がおこなった(井関さん提供)
岩谷さんらが作成した「兵庫県立大通信 1460」。イラストレーターの選定、発注なども学生がおこなった(井関さん提供)

そんな岩谷さんの卒業研究のテーマは、アイドルグループ・NiziUを事例としたアイドル文化。1970年代以降の「男性にとっての疑似恋愛」を提供したアイドルと違い、「女性の理想の成長物語」を提供していると分析した。

「広報誌を作ったことで、編集されたコンテンツには表立って見えていない情報も隠されているなど、制作側の考えを知ることができ、それが分析にも役立ちました。毎週、読んだ先行研究などをゼミで発表してきたことも、社会人として役立っていると感じます」(岩谷さん)

分析から情報発信、課題解決へ

一つの専門分野にとどまることなく、社会学、広告論、広報論などの知見を積極的に活用し、社会に役立てていく。これが、井関准教授の研究スタイルだ。

「いまはビジネスだけでなく、地域、環境、文化など、様々な領域の課題解決においてもメディアをいかに活用するかが重要です。これまでの事例を分析した上で、課題に適した新しい方法を提案することが、求められています」

ものごとの魅力や課題をどう伝えていくか。新たな情報発信の種がまかれている。

 

【大学メモ】

兵庫県立大学 2004年に神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学の県立3大学が統合して開学。姫路、神戸などに9キャンパスを持つ。19年に国際商経学部、社会情報科学部を設置。学部学生数は5411人(2020年5月1日時点)。

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