大学入学共通テスト 傾向と対策

共通テスト「形式優先、各科目が目指す力を問うていない」 大学教授ら批判

2021.06.07

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山下 知子
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今年1月に初めて実施された大学入学共通テスト。大学教授や予備校講師らでつくる「入試改革を考える会」が5月21日、文部科学省で記者会見を開き、「問題の形式が優先され、各科目が本来目指す力を問えていない」と総括しました。代表の大内裕和・中京大教授(教育社会学)は「形式の枷(かせ)を外し、大学入試センター試験のように、もっとシンプルに学力を問う出題が必要だ」とし、共通テストの出題方針を見直すよう求めました。(写真は、記者会見に臨む「入試改革を考える会」のメンバーら=2021年5月21日、文科省)

「大学入試が大学教育をゆがめる」

「入試改革を考える会」は2019年10月に結成されました。共通テストで当初予定されていた英語民間試験の導入や、国語と数学での記述式導入の問題点を訴え、シンポジウムを開くなどしてきました。

高大接続改革として行われた共通テストは、高校の学習指導要領を強く反映した内容となっています。会見の冒頭、大内教授は「これまでは『大学入試が高校教育をゆがめる』ことが問題になっていたが、共通テストでは『大学入試が大学教育をゆがめる』ことが問われている」と述べ、「学習指導要領の目標にここまで大学入試を合わせる必要があるのか? 共通テストは大学入試であって、大学入試として必要性を満たすことが重要だ」と訴えました。会見では続けて、英国数理の各教科の専門家がそれぞれの試験内容について見解を明らかにしました。

英語 見当違いの複雑さ

英語では、阿部公彦・東大教授(英文学)が「言語を運用する時は、4技能が複雑に絡み合っていて、きれいに切り分けることはできない。出題者が4技能にこだわり、無理に分けて可視化しようとした結果、問題に見当違いの複雑さが生まれ、精度が落ちた」と批判しました。

発音問題や語句整序問題などがなくなった点にも触れました。日本語には英語のようなアクセントはなく、日本語話者は意識しないといけない、と阿部教授。「どこにアクセントがあるのかチェックすることで身につくわけではないが、意味のないことではない。語句整序問題も、書く力の土台を見ることができる」と話しました。リスニング問題についても「変に受験生の日常にすりよって『エセ日常』になっている」と指摘。特に、米ニューヨークでミュージカル鑑賞をする設定の問題については「自分の内面をリスト化してチェックするなんて、現実にはあり得ない。すごく不自然だ」と言います。

阿部教授は「入試問題はシンプルさが大事」と強調します。「問題形式が優先されると複雑になり、試験対策に時間とお金をかけた人の方が有利になってしまう。堅固な英語力を測るものであるべきだ」と訴えました。

英語(リスニング)の試験で受験生に配布された機器=2021年1月16日、東京都文京区の東京大、鬼室黎撮影
英語(リスニング)の試験で受験生に配布された機器=2021年1月16日、東京都文京区の東京大、鬼室黎撮影

英語については、鳥飼玖美子・立教大名誉教授も意見文を寄せ、「情報を素早く見つける瞬発力のある受験生に有利な設問が多く、英語の基礎力、根源的な思考力・判断力を問う出題とはいえない」と総括しました。

リーディングについては、特に後半の長文問題について「感想めいた内容が長々と書かれているだけで、これまでのセンター試験に見られたような、英語らしい論理構成で書いてある評論とは異なるもの」と批判。リスニングについても「内容が薄いものが多く、『本当に英語力を測っているのかな?』という問題が多いと感じた」としています。阿部教授と同様、発信力(話す・書く)の基礎を見るためのアクセント問題や語句整序問題を廃止した点について「不可解」とし、「今回の共通テストで出題されたような英語問題で高得点を取ることを高校英語教育の目標にしてしまうと、将来、英語圏の大学に留学したとしても、授業についていくことも議論をすることもできない」と懸念を表明しました。

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