学習と健康・成長

東日本大震災から10年、防災教育はどう変わったか 当時知らぬ子どもたちへ伝えるために

2021.06.22

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夏野 かおる
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東日本大震災からはや10年。現在の小学生は当時の様子を知らない世代となり、地震や津波の恐ろしさを感じづらくなっています。そうした中で、子どもたちに防災の重要性を知ってもらうため、自治体や学校、家庭などではどんな取り組みをしているのでしょうか。今回は、防災教育の昔と今を整理しつつ、保護者ができることについて専門家に伺いました。

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話を聞いた人

宮﨑 賢哉さん

一般社団法人防災教育普及協会 教育事業部長/社会福祉士

(みやざき・けんや)阪神・淡路大震災をきっかけに、在学中から災害ボランティア活動や防災教育に取り組む。2005年より被災地支援活動の経験を活かし、大学での災害ボランティア育成や学校・家庭・地域における防災教育実践や支援に携わる。

「防災教育」を実践と担い手育成の2軸で普及

——防災教育普及協会では、どのような取り組みをされているか、改めて教えてください。

私たちは、「防災教育」を実践と担い手育成の2軸で普及しています。

実践では、小中高校などの学校はもちろん、教育委員会をはじめとする行政機関、民間企業などに講師を派遣したり、教材やプログラムを開発・提供したりしています。

また、防災教育の担い手育成にも力を入れています。「担い手不足」は、東日本大震災以前からずっと指摘されてきた課題です。防災教育は、算数や国語のような「教科」ではないので専任の先生がいません。他の教科指導もある中、学校の先生だけが担い手になることは限界があります。

一方で、防災に熱心な先生がいる学校では、非常に良い取り組みが行われるけれども、その先生が異動してしまうとあとが続かない、あるいは引き継いだ先生の負担が大きくなってしまうというケースも少なくありません。

私たちが2018年に実施した「防災教育実践に関するアンケート」においても、「担い手不足」が課題として挙がっています。

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防災教育実践に関するアンケート調査」の結果。「ぼうさいこくたい2018」のセッションとして防災教育普及協会が主催した「防災教育交流フォーラム 〜今、防災教育に足りないものは何か〜」の参加者に対して行ったものである

私たちの活動として講師派遣を行っていますが、一部の限られた講師だけが担い手となるには限界があります。そのため、各種セミナーや防災教材を普及啓発するためのイベント、企業を対象とした研修などを実施し、防災教育に関心のある全国の防災関係者や地域住民の方、企業の方などが担い手となれるよう、活動しています。

——防災教育普及協会で、新たに取り組まれている「災害伝承」とはどのような活動でしょう。

2021年2月から、東日本大震災が発生した3月11日を「災害伝承と防災教育の日」として制定する活動に協力しています。現在日本では、防災に関する日がいくつか制定されています。具体的には、以下のとおりです。

<防災に関する日>
1月17日…防災とボランティアの日。阪神・淡路大震災の発生日であり、ボランティア活動が社会的に広く認知されたことから制定。この日を含む1週間が「防災とボランティア週間」になる。

9月1日…防災の日。関東大震災の発生日であり、全国的に避難訓練などが行われる。この日を含む1週間が「防災週間」になる。

11月5日…津波防災の日。東日本大震災を受けて制定された「津波対策の推進に関する法律」で定められる。この日は『稲むらの火』のモデルにもなった安政南海地震の発生した日にちなむ。

東日本大震災では多くの尊い命が失われましたが、「津波てんでんこ(※)」をはじめ、災害伝承によって救われた命もありました。

※津波被害が多い三陸地方の言い伝え。「津波が起きたら家族が一緒にいなくても気にせず、てんでばらばらに高所に逃げろ」という意味

こうした災害伝承は、教科書やワークブックでは伝わりきらないリアリティをもって、地域のことを知り、命を守るすべを学んで有効な手だてとなります。

そこで私たちは、慰霊の思いも込めて3月11日を「災害伝承と防災教育の日」とする活動に協力し、全国各地の災害伝承活動をさらに進めていこうと考えています。

たとえば関東大震災は、発生から100年近く経っていますが、「防災の日」が制定されたことで、私たち後代にも記憶や教訓が受け継がれています。3月11日もまた、防災教育と災害伝承の大切さを今一度、再確認できる日になればと考えています。

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